【男性更年期(LOH症候群)とは?】〜日本漢方と最新医療からのアプローチ〜
【男性更年期(LOH症候群)とは?】〜日本漢方と最新医療からのアプローチ〜
🔹 中高年男性に増えている「心と体の不調」の正体
40代後半〜60代にかけて、「やる気が出ない」「朝の勃起がなくなった」「疲れが抜けない」と感じている方はいませんか?
それは、もしかすると男性更年期障害(LOH症候群)かもしれません。
LOH(Late-Onset Hypogonadism)とは、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の分泌低下によって起こる、心身の不調の総称です。
🔹 主な症状(Aging Male Symptomsスコアより)
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抑うつ、意欲低下
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集中力の低下、記憶力の衰え
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性欲減退、勃起力の低下
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筋力低下、疲労感
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睡眠障害、イライラ感
🔹 現代医学による診断と治療
🧪 診断の基本
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血中総テストステロン(TT)、血中遊離テストステロン(Free T)の測定(午前中の採血)
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AMSスコア(自己評価質問票)による症状評価
💉 治療の選択肢
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テストステロン補充療法(TRT)
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栄養・生活習慣改善(ビタミンD、運動、睡眠)
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心理的支援(カウンセリング含む)
🔹 日本漢方からのアプローチ
日本の伝統的な漢方医学では、LOHの症状は「腎虚(じんきょ)」や「気虚」「肝うつ」などの状態に対応します。
🌿 よく使われる処方(体質・症状により医師の判断が必要)
漢方名 | 主な作用 | 対応する症状例 |
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八味地黄丸(はちみじおうがん) | 補腎・補陽・利尿 | 筋力低下、頻尿、性機能低下、下肢冷え |
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 補気・抗疲労 | 倦怠感、やる気が出ない、集中力低下 |
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | 精神安定・抗ストレス | イライラ、不安、不眠 |
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) | 不安・神経過敏 | 夜間覚醒、のぼせ、焦燥感 |
☝ 漢方は対症療法ではなく体質改善を目的とするため、診察のうえで処方が決まります。
🔹 TRTだけに頼らない「統合アプローチ」が重要
最近の研究(2025年・日本泌尿器科学会)では、テストステロン補充療法(TRT)は、正常ホルモン値でもLOH症状がある男性に有効な可能性があることが示されました【PMID: 40459098】。
しかし、ホルモン補充に頼るだけではなく、以下を組み合わせた治療が理想です。
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睡眠と運動の最適化
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食事改善(亜鉛・ビタミンD・DHEAなどの栄養補助)
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ストレスケア(心理療法・マインドフルネスなど)
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漢方による体質改善
🔹 まとめ:男の不調を“年齢のせい”にしない
男性更年期は、「年だから仕方ない」と我慢するのではなく、医療と漢方の両面からアプローチ可能な“治療できる状態”です。
「ちょっとおかしいな」と感じたら、早めの検査と相談をおすすめします。
菊池クリニックでは、血液検査+漢方診療+栄養指導を組み合わせた統合的アプローチを提供しています。
🔸免責事項
本記事は、一般的な医学情報および最新の研究知見に基づいて作成されたものであり、特定の疾患や症状に対する診断・治療を目的としたものではありません。
ご紹介した治療法(例:テストステロン補充療法、漢方処方など)は、医師の診察・検査に基づいて適応を判断する必要があります。
ご自身の健康状態に不安がある方は、必ず医師や専門医療機関にご相談ください。
いま見直すべき!認知症予防の最前線
🧠 いま見直すべき!認知症予防の最前線(2025年版・実践ガイド)
“ただやるだけ”では意味がない!効果的な予防には「内容」と「継続」がカギ。
認知症は加齢によって進行しますが、実はその40%以上が予防可能だと科学的に示されています。
ただし、「何をどのようにやるか」が極めて重要です。近年の研究では、中途半端な介入は十分な効果を発揮できないばかりか、見かけ上悪化したように見えるケースも報告されています。
✅ コントロール可能な14のリスク因子(Lancet 2024)
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低教育歴(若年期)
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高血圧(中年期)
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聴力障害(補聴器で改善可能)
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喫煙
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肥満(中年期)
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うつ病
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運動不足
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糖尿病
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社会的孤立
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過度の飲酒
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頭部外傷
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大気汚染
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高LDLコレステロール 🆕
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矯正可能な視力低下 🆕
これらはすべて、ライフスタイルの見直しで改善可能な因子です。
🔬 科学が示す「効果的な介入」の条件
📉 J-MIND-Diabetes 試験
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糖尿病高齢者を対象とした18か月介入
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結果:有意な認知機能改善は認められず
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一方で体重減少や記憶スコアには改善傾向あり
🚫 不十分な介入がもたらす「非効果性」
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AgeWell.de試験では、介入群と対照群に大きな差が出なかった
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遵守率が低いと、かえって“差がない”または悪化に見える可能性も
🔑 教訓:介入の「質」「量」「継続性」がそろってこそ、効果が出る!
🌟 成果が出る4本柱(FINGER試験に学ぶ)
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運動:週150分の有酸素+筋トレで血流&脳活性UP
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食事:MIND食(地中海+DASH)で抗炎症+抗酸化対策
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知的活動:読書、学習、会話、地域活動などで脳の可塑性を高める
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生活習慣:睡眠(7〜8時間)、禁煙、ストレス軽減など
📈 成功のカギは「続けられる仕組み」づくり
工夫 | 方法例 |
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モチベーション維持 | スマホアプリ、仲間と共有、記録習慣 |
認知行動的アプローチ | 小さな行動の積み重ねで自信UP |
多職種連携の支援体制 | 医師、栄養士、運動指導士、地域支援員などの関与 |
💬 「知っている」から「やっている」へ、そして「続けている」へ!
🧭 まとめ:あなたの習慣が未来の脳をつくる
認知症予防は、一度の講座や短期間の運動では完結しません。
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🔁 継続的な実践
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🎯 適切な介入強度
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🤝 社会的な支援とつながり
この3つがそろって初めて、“脳を守る”実効性ある予防が実現します。
"やっているつもり"ではなく、本当に効く“認知症予防”を。今日から、あなたの生活に科学を取り入れましょう!
ARFID(回避・制限性食物摂取障害)とは何か:発達・精神・栄養の交点を読み解く
ARFID(回避・制限性食物摂取障害)とは何か:発達・精神・栄養の交点を読み解く
▶ はじめに
ARFID(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder:回避・制限性食物摂取障害)は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)に新たに加えられた比較的新しい摂食障害の診断カテゴリです。
その病態は、単なる偏食とは異なり、身体的・心理的・発達的要因が複雑に関与する多因子性の障害であり、臨床では誤診や見逃されることも少なくありません。
▶ ARFIDの診断的特徴(DSM-5-TR準拠)
ARFIDは以下のような症状を呈する摂食障害の一種で、以下4つのうちいずれかに該当すれば診断対象となります:
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臨床的に意味のある体重減少または発育不全(小児)
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重大な栄養欠乏
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栄養補助(経管栄養や経静脈栄養)が必要な状態
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心理社会的機能障害(例:外食の極端な忌避、社交不安)
重要なのは、神経性やせ症や過食症に見られるような身体像のゆがみや体重への執着がない点です。
▶ ARFIDの成因:原因か結果か?
◼ 「原因」としてのARFID
極端な栄養制限が中枢神経系やホルモンバランスに影響し、不安障害・抑うつ・注意障害を二次的に誘発することがあります。
栄養学的に見ても、以下のような微量栄養素の欠乏が臨床的に確認されます:
栄養素 | 欠乏の影響 |
---|---|
ビタミンB1 | イライラ、不安、記憶障害(ウェルニッケ脳症の前駆症状) |
鉄・亜鉛 | 注意力低下、無気力、不安の増悪 |
マグネシウム | GABA低下 → 神経過敏・パニック発作様症状 |
ビタミンD | 抑うつ、免疫機能の低下 |
発達障害(特にASDやADHD)、不安障害、トラウマ体験などが一次的背景因子として存在し、食行動異常が二次的に出現することもあります。
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ASDでは感覚過敏やこだわり行動が、
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パニック障害や社交不安障害では窒息や嘔吐への恐怖が
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心的外傷後ストレス障害(PTSD)では条件づけによる回避行動が
それぞれARFIDの誘因となり得ます。
▶ 臨床心理・催眠療法・心身医学からの示唆
ARFIDの治療においては、意識化されない恐怖・嫌悪・身体感覚の過敏性がしばしば根底に存在します。
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催眠療法(臨床催眠)により、回避の起源となる無意識的記憶の探索と再処理が有効なケースがあります。
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心身医学的には、食物と感情記憶(特に不安や拒絶)との連関に着目し、感覚処理障害や自律神経機能異常への理解が重要です。
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認知行動療法(CBT-AR)では、回避行動に対する曝露と行動修正が中核的アプローチとなります。
▶ 最新研究の紹介:ARFIDと併存疾患
2025年に発表されたスウェーデンの大規模疫学研究(PMID: 40074527)では、ARFIDと神経発達症・精神障害の併存リスクが以下のように報告されています:
併存疾患 | オッズ比(ARFID群 vs 非ARFID群) |
---|---|
自閉スペクトラム症(ASD) | 13.7倍 |
ADHD | 9.4倍 |
パニック障害 | 15.3%が診断該当 |
分離不安障害 | 29%の有病率 |
▶ 治療アプローチ:多職種・多領域的介入が鍵
ARFIDの治療は「心理」「栄養」「医療」「発達支援」すべてを含む包括的介入が求められます。
🧠 心理療法
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CBT-AR(認知行動療法による食行動修正)
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ACT(アクセプタンス&コミットメント療法)
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臨床催眠による感覚過敏・恐怖記憶への働きかけ
🩺 医学的管理
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栄養欠乏の補正(鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群など)
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成長・内分泌モニタリング
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不安・抑うつが強い場合は慎重な薬物療法(SSRIなど)
🤝 家族支援
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食卓環境の調整
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非強制的な食行動支援
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食事場面の心理的安全性確保
▶ おわりに:ARFIDを「偏食」と片付けないために
ARFIDは、表面的には食の問題に見えても、その背景には発達、感覚、心理、身体の深い相互作用が存在します。
適切な評価と個別化された支援があれば、回復可能な障害でもあります。
ARFIDの本質を理解し、症状の奥にある「ことばにならない体験」へ臨床家が寄り添うことが、最も有効な治療介入の第一歩です。
疑わしい場合には、小児精神医学の専門家を受診してください。
🫀 腎臓が心臓を悪くする⁉「心腎症候群」とは何か?
🫀 腎臓が心臓を悪くする⁉「心腎症候群」とは何か?
フリーラジカル、炎症、そして漢方によるアプローチ
✅ 心臓と腎臓は“連携プレイヤー”だった!
心臓と腎臓は、体内でそれぞれ独自の役割を果たしています。
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🫀 心臓は血液を全身に送り出すポンプ
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🩺 腎臓は血液をろ過して老廃物や余分な水分を排出するフィルター
この2つは密接に連動していて、どちらかの不調がもう一方に影響を与える関係にあります。
💣 心腎症候群とは?
心臓と腎臓のどちらかが先に悪化し、もう一方の臓器機能も連鎖的に低下する病態。
これが「心腎症候群(Cardiorenal Syndrome, CRS)」です。
心不全 → 腎機能低下(CRSタイプ1・2)
腎機能低下 → 心臓へ負担(CRSタイプ3・4)
中でも近年増加しているのが、慢性的な心不全によって腎機能が悪化するタイプ(CRS-2)です。
🔬 原因のカギは「フリーラジカル(活性酸素種)」
私たちの体内では、酸素代謝やストレスなどにより「フリーラジカル(ROS)」と呼ばれる反応性の高い物質が作られます。これが過剰になると、以下のような臓器へのダメージを引き起こします:
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心筋細胞や腎細胞の酸化ストレス
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炎症性サイトカインの誘導
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細胞内カルシウム流入を引き起こす「TRPM2チャネル」の活性化
つまり、フリーラジカル → TRPM2活性化 → 細胞ダメージ → 心腎機能低下という
分子レベルの“悪循環スイッチ”が働いてしまうのです。
🍵 そこで注目されるのが「漢方」の可能性
最新の研究では、日本漢方に含まれる生薬成分が、酸化ストレスや炎症に介入することが示されています。
🌿 代表的な処方と働き:
処方名 | 主な作用 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
五苓散 | 利水+抗酸化 | 急性のむくみ、熱感、心不全の急性期 |
柴苓湯 | 抗炎症+利水 | 高血圧・慢性心不全・水分代謝異常 |
牛車腎気丸 | 腎虚+抗酸化 | 高齢者・腎機能低下・夜間頻尿 |
大柴胡湯 | 肝代謝+炎症調整 | 肥満・高血圧・脂質異常がある場合 |
特に「黄芩(おうごん)」「大黄」「車前子」などの生薬には、ROS抑制・TRPM2抑制・細胞保護に関与するフラボノイドやサポニンが含まれていることが分かっています。
🧪 科学的な裏付けも
近年の研究では、以下のような効果が実証されています:
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五苓散:糖尿病性心筋症モデルで酸化ストレス抑制・心筋保護作用
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柴苓湯:腎炎モデルでNLRP3炎症複合体の抑制、浮腫改善
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牛車腎気丸:CKDマウスで抗線維化・抗酸化・アポトーシス抑制
これらは、漢方が「体質改善」だけでなく、分子メカニズムレベルで心腎を保護しうる医療資源であることを示しています。
🧠 では、どんな人が注意すべき?
✔ 高血圧や糖尿病があり、腎機能に不安がある
✔ むくみやすい、心不全の既往がある
✔ 検診でeGFRが少し下がっている
✔ 「疲れやすい・夜間尿が多い・足がむくむ」などの自覚症状がある
上記に当てはまる方は、「心腎連関病態」の予防・ケアの観点からも早期対策が重要です。
✅ まとめ
キーワード | ポイント |
---|---|
心腎症候群(CRS) | 心臓と腎臓の悪循環で起きる疾患 |
ROS・TRPM2 | 酸化ストレスが臓器障害を引き起こすメカニズム |
日本漢方 | 漢方成分に抗酸化・抗炎症・利水作用あり |
応用 | 病態ごとに処方を選び分けることで補完医療に |
💬 最後に
「心腎症候群」は一見複雑な疾患ですが、
その背景にあるメカニズムを知ることで、早期介入や予防が可能になります。
最新の栄養学・漢方・生活指導を組み合わせることで、
心臓と腎臓を長く守るケアができる時代です。
🌱 日々の食事・運動・水分摂取、そして必要に応じた漢方処方の検討を、
医師や薬剤師と一緒に進めてみましょう。
📌 免責事項(ディスクレーマー)
本記事は、心腎症候群および関連する栄養・漢方治療に関する最新の医学的知見や研究データに基づいて一般の方向けに情報提供を行うものであり、特定の疾患に対する診断・治療・処方を目的としたものではありません。
医療に関する判断は、必ず医師・薬剤師・管理栄養士などの有資格の医療専門職の指導のもとで行ってください。
記事中で紹介している漢方薬やサプリメントについても、体質や併用薬、既往歴によっては適さない場合があります。自己判断での服用や中止は避け、必要に応じて医療機関へご相談ください
子どもの起立性調節障害とビタミンD 〜最新研究を踏まえた理解と対応〜
子どもの起立性調節障害とビタミンD 〜最新研究を踏まえた理解と対応〜
🧠 起立性調節障害(OD)とは?
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起立時に血圧や心拍数の調整がうまくいかず、
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めまい
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立ちくらみ
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動悸
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倦怠感
などの症状が出る状態
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学童期〜思春期に多く見られます
☀️ ビタミンDの役割
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骨を強くするだけでなく、
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免疫の調整
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神経機能のサポート
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自律神経のバランス調整
に関与しています
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🔬 最新研究の紹介(Front Pediatr. 2025)
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ODの子ども84人と健常児84人を比較
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起立性調節障害のある群では、
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ビタミンD(25(OH)D)濃度が有意に低い
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自律神経系の調整に関与する物質(ACE2・Ang(1–7))も低い
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→ ビタミンD欠乏が自律神経不調に関連する可能性
⚠️ 全てに当てはまるわけではない
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一部の研究(例:STURDY試験)ではビタミンD補充の効果が限定的
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ビタミンDは "原因" ではなく "関連" にとどまる可能性も
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効果は個人差があるため、自己判断は禁物
✅ こんなときはビタミンD検査を検討
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朝がつらくて起きられない
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少しの動作で疲れやすい
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めまいや集中力低下
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日光を浴びる時間が少ない
🍳 ビタミンDを補うには?
方法 | 内容例 |
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日光浴 | 15〜30分、手足に日光を当てる |
食事から摂取 | 鮭、サバ、卵黄、きのこ類など |
サプリメント | 医師と相談の上、800〜2000 IU/日 |
📌 まとめ
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ビタミンDは、起立性調節障害の背景に関与する可能性あり
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必ずしも全例に当てはまるわけではなく、
"必要な人に、必要なだけ" が基本
📎 免責事項
本資料は、教育・啓発目的で作成されたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。実際の症状や治療方針については、必ず医療機関の専門医にご相談ください。