2025-04-19 17:11:00

ロングCOVIDの原因は「抗体の暴走」?

 

🧬 ロングCOVIDの原因は「抗体の暴走」?

─ 抗N抗体とウイルスの断片が引き起こす“体の内なる火種”とは ─

🔍 抗体は「体を守るもの」──でも、例外がある

私たちの体は、ウイルスなどの異物が入ってくると、それをやっつけるために「抗体」をつくります。
ワクチンもこの抗体をつくらせて、病気を防いでくれます。

でも──すべての抗体が、いつも「味方」でいてくれるとは限らない。
そのことを示しているのが、ロングCOVIDという、感染後に症状が長引く病態です。

🧬 問題は「N抗体」──感染して初めて作られる抗体

新型コロナウイルスの構造には2つの重要なたんぱく質があります:

名前 場所 体がつくる抗体
スパイク(S) ウイルスの外側 抗S抗体(ワクチンでも生成)
ヌクレオカプシド(N) ウイルスの内部 抗N抗体(感染しないとできない)

このN抗体が、ロングCOVIDの患者で「高く、長く残っている」という研究結果が出ています。

🧪 データで見る:ロングCOVID患者の「異常な抗体持続」

英国のVirus Watchという大規模研究での結果(Beale et al. 2025)は、以下のようなものでした:

📊 図1:ロングCOVID(PCC)の人の方が、感染から270日経っても抗N抗体が陽性である割合が高い

 

PCC_抗体スライド_日本語完成版.png


📈 図2:抗N抗体の量が、PCC群の方が高く、しかも下がりにくい

👉 一般的に抗体は徐々に減っていくはずなのに、PCC群ではずっと高いままなのです。

🧠 中山英美先生(阪大)の仮説:「残った抗原×抗体の暴走」

この現象に対して、大阪大学 微生物病研究所の中山英美先生は以下のような仮説を立てています:

感染後、体のどこか(腸管、リンパ節など)にNたんぱく質の断片(抗原)が残る
それに対して抗N抗体が過剰に反応し続ける
Fc受容体という“引き金”を通して免疫細胞(マクロファージなど)が刺激され続ける
炎症性サイトカイン(IL-6, IL-8など)が出続ける

この「慢性的な免疫の火種」が、ロングCOVIDの症状──
脳の霧(ブレインフォグ)や倦怠感、動悸、関節痛などを引き起こしている可能性があるのです。

📷 図でみる抗N抗体の特徴

👇 以下の図は、感染後の抗N抗体の動きを示したものです。
赤=急性期のみで回復した人、青=PCC(ロングCOVID)になった人です。

PCC_抗体スライド_日本語完成版.png

  • 左上(図1)では、日が経ってもPCC群は高い抗体陽性率を保っています。

  • 右上(図2)では、抗N抗体の量がPCC群で高く、長期間持続しているのが分かります。

💉 ワクチンによる「抗S抗体」には問題なし

同じ研究では、ワクチンで作られる抗体(抗S抗体)にはPCCとの関係は見られなかったと報告されています。

つまり──

✅ 抗体が悪いわけではない
❌ ワクチンが悪いわけでもない
💥 「感染後にできる抗N抗体」が、体に残ったウイルスの断片(N抗原)に過剰反応している
ことが、ロングCOVIDの一因かもしれないということです。

📌 まとめ:抗N抗体は“感染の証拠”から“病気の火種”へ

抗体は本来、体を守ってくれる存在。
しかし場合によっては、体内に残るウイルスの破片に反応して、かえって炎症を引き起こす存在にもなりうる。

この「抗体の暴走」こそが、ロングCOVIDの正体の一部かもしれません。

🧪 参考研究

 

2025-04-18 18:59:00

🧒両ほほがまっ赤に?──「伝染性紅斑」が流行しています

 

 

 

 

🧒両ほほがまっ赤に?──「伝染性紅斑」が流行しています

最近、当院にも「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」と診断されるお子さんが続けて受診されています。

ある小学校では、10人以上の患者さんが出たという話もありました。地域的に小さな流行が起こっている可能性があります。

📌 伝染性紅斑って、どんな病気?

「伝染性紅斑」は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスによって引き起こされる感染症です。
子どもに多く見られ、特に春から初夏にかけて流行する傾向があります。

最大の特徴は、なんといっても顔の紅斑です。

😳 顔が「ビンタされたみたい」ってどういうこと?

発熱や風邪のような症状のあと、突然、両ほほが真っ赤になります。

その見た目が「平手で叩かれたように」見えるため、英語では「slapped cheek syndrome(ビンタ顔症候群)」とも呼ばれています。

顔の紅斑が出た頃には、もうウイルスの感染力はほとんどなくなっています。
つまり、見た目は派手でも、人にうつす心配はほぼない時期です。

🧩 体や手足にも、網目状の模様が?

数日すると、腕や足、体にレースのような紅斑が現れることもあります。

この発疹は、運動後や入浴後、日光を浴びたあとに濃くなることがありますが、やがて自然に消えていきます。

🏫 学校や園は休まなくていいの?

発疹が出た時点では感染力がほぼ消えているため、登園・登校は可能です。
ただし、発熱や体調不良があれば無理をせず、しっかり休ませてあげてください。

🤰 妊婦さんはご注意を

パルボウイルスB19は、妊娠中の方が感染すると、まれに胎児に影響(胎児水腫など)を及ぼすことがあります。
お子さんが伝染性紅斑と診断された場合、妊娠中のご家族がいる場合は、念のため産婦人科に相談することをおすすめします。

🩺 治療は?ワクチンはあるの?

治療は特別な薬は不要で、自然に回復します。
解熱薬や痒み止めなど、症状に合わせた対症療法が行われます。

残念ながらワクチンや特効薬はありません。

👐 最後に:流行時期だからこそ、安心の知識を

見た目がインパクトのある「伝染性紅斑」ですが、ほとんどのお子さんは元気に回復します。

ただし、ご家族に妊婦さんがいる場合や、基礎疾患(溶血性貧血など)のある方が同居している場合は注意が必要です。

不安な症状があれば、遠慮なくご相談ください。

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2025-04-15 19:12:00

なぜ今「百日咳」が増えているの?

 

😷 なぜ今「百日咳」が増えているの?コロナとの意外な関係とは【2025年最新版】

「最近、子どもの咳が長引いてる…」
「風邪かと思ってたら、2週間以上も咳が止まらない!」

そんなときは、もしかするとそれ「百日咳(ひゃくにちぜき)」かもしれません。

そして今、百日咳が全国的に増加傾向にあるのをご存じですか?
実はその背景には、新型コロナウイルスの流行との意外な関係があるんです。

🦠 百日咳ってどんな病気?

百日咳は、細菌による呼吸器感染症です。名前の通り、長引く咳(100日咳)が特徴です。

主な症状:

  • 2週間以上続くしつこい咳

  • 発作のように止まらない咳

  • 咳のあと「ヒューッ」と音がする(吸気性笛声)

  • 咳き込みすぎて吐いてしまうことも

特に赤ちゃんや高齢者では重症化のリスクがあります。

📈 2025年、なぜ百日咳が増えているの?

🧬 コロナ禍で「免疫の貯金」が減っていた!?

2020〜2022年、みんながマスク・手洗い・外出自粛をしていたことで、百日咳を含む多くの感染症が一時的に減少しました。

でもその反面、体が免疫をつける機会も少なくなっていたのです。

これを医学的には「免疫の負債(Immunity Debt)」と呼びます。
つまり、「かかるはずだった感染症にかからなかった分、今になってまとめて流行している」という現象です。

🧪 コロナにかかると、免疫が弱くなるの?

一部の研究では、新型コロナにかかると一時的に免疫機能が落ちることが報告されています。

  • 風邪を繰り返す

  • 咳がなかなか治らない

  • ワクチンを打っても抗体がつきにくい

こういった「免疫のリセット状態」が、百日咳の再感染を起こしやすくしている可能性があるのです。

🧪 いまは15分でわかる!百日咳の検査が進化

「百日咳かも?」と思ったら、病院で鼻の奥をぬぐうだけの検査で診断できるようになりました。

✅ リボテスト百日咳(Ribotest Pertussis)

  • 検査時間:約15分!

  • 感度・特異度ともに高い

  • 全国の医療機関で導入が進んでいます

早めに診断がつけば、抗菌薬(アジスロマイシンなど)で治療でき、他の人にうつすのも防げます。

💉 予防がなにより大切!

赤ちゃんには:

  • 生後3か月からDPTワクチン、4種混合、5種混合(定期接種)をしっかり受けましょう

大人には:

  • 実は免疫は10年ほどで切れるので、再感染する人も

  • 妊婦さんや育児中の家族には追加接種(TdapやDPT)も検討されます

赤ちゃんを守るためには、周囲の大人が免疫を持っていることが大切です。

✅ まとめ

💡 ポイント 📌 内容
百日咳が増加中 2025年、全国的に報告数が上昇
コロナと関係あり? 免疫低下や感染機会の抑制が関係
簡単な検査あり 15分で診断できる抗原検査が登場
ワクチンで予防できる 赤ちゃんも大人も、接種が大事!

🗣 おまけ

コロナの影響はもう終わったと思っていたら…
実は、他の病気にも「静かに」影響を与えていたんですね。

百日咳は昔の病気ではなく、今この時代にも私たちが気をつけるべき感染症です。
長引く咳、赤ちゃんの急な咳き込み…。そんなときは早めに医療機関で相談してみてください。

 

2025-04-15 08:42:00

地中海の6つの植物が心臓を守る!科学が証明した“自然の力”

 

地中海の6つの植物が心臓を守る!科学が証明した“自然の力”

心臓の健康を守るために、毎日の食事を少し見直してみませんか?
地中海沿岸地域の人々は、古くから特定のハーブや植物を料理に多用し、長寿と心疾患の少なさで知られています。実は、これらの植物の中には、現代の科学でもその効果が実証されたものがあるのです。

今回は、心臓病の予防・改善に役立つとされる、地中海地域の6つの植物を紹介します。それぞれの働きや、実際の研究に基づいた効果もあわせて解説していきます。

1. オリーブ – 地中海食の象徴

有効成分:オレイン酸、ヒドロキシチロソール、オレウロペイン
主な作用:抗酸化、抗炎症、血管内皮の保護

オリーブオイル、特に「エクストラバージン」は、心臓の健康において最も注目されています。スペインのPREDIMED試験では、毎日高品質なオリーブオイルを摂取していた人々が、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを大きく減らしたと報告されています。

2. ニンニク – 古代からの天然降圧剤

有効成分:アリシン
主な作用:血圧低下、抗血小板作用、コレステロール改善

ニンニクは、心臓病に関する複数のリスクファクターを同時に改善する働きがあります。アリシンには、血圧を下げ、血管を柔らかく保つ作用があることが多くの臨床研究で示されています。

3. オレガノ – 小さな葉に秘めた抗酸化力

有効成分:カルバクロール、チモール
主な作用:抗酸化、抗炎症

ピザやパスタでおなじみのオレガノですが、その強力な抗酸化作用が血管の老化を防ぎます。主に試験管実験や動物研究で、LDLコレステロールの酸化を抑える働きが報告されています。

4. ローズマリー – 血管の若返りハーブ

有効成分:カルノソール、ロスマリン酸
主な作用:抗酸化、抗炎症、血管保護

ローズマリーに含まれる成分は、細胞レベルでの酸化ストレスを抑え、血管の機能を改善する可能性があります。肉料理やスープに加えるだけで、日常的に取り入れやすいのも魅力です。

5. ザクロ – 心臓を潤す赤い果実

有効成分:ポリフェノール、エラジタンニン
主な作用:血圧低下、血管内皮機能の改善

ザクロジュースには、血圧を下げたり、血管の弾力性を高める働きが報告されています。短期間の摂取でも、血管機能や炎症マーカーの改善がみられるという研究も。

6. トマト – リコピンの力で動脈を守る

有効成分:リコピン
主な作用:抗酸化、LDL酸化抑制、血流改善

トマトに含まれるリコピンは、特に加熱調理することで吸収率が上がります。疫学的研究では、トマトの摂取量が多い人ほど、心筋梗塞や動脈硬化のリスクが低いことが報告されています。

まとめ:食卓から始める心臓ケア

これら6つの植物は、いずれも地中海食において日常的に使われているものばかり。特別なサプリメントや薬に頼らなくても、普段の食事に取り入れるだけで、心臓病予防の第一歩となります。

とはいえ、重要なのは「バランス」。これらの植物を取り入れながらも、野菜・果物・魚介・オリーブオイルを中心とした全体の食事パターンを見直すことが、最も効果的な心臓病対策です。

あなたの健康は、今日の一皿から始まります。
地中海の知恵を、ぜひあなたの食卓にも取り入れてみてください。

 

2025-04-14 19:04:00

コロナ後の「なんとなく不調」——甲状腺が関係しているかもしれません

 

コロナ後の「なんとなく不調」——甲状腺が関係しているかもしれません

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した後に、「なんとなく体調が優れない」「気分が不安定」「動悸や疲れが続く」といった不調を感じていませんか?

それらの症状は、甲状腺機能の一過性の異常、特にウイルス感染後に生じる甲状腺炎に伴うホルモン異常が関係している可能性があります。

甲状腺とは?

甲状腺は、首の前側に位置する小さな臓器で、代謝や自律神経機能を調整するホルモン(T3、T4)を分泌しています。これらのホルモンが過剰に分泌されると、心拍数の上昇、不安感、体重減少、発汗過多など、さまざまな症状が現れます。

なぜCOVID-19後に甲状腺に異常が起こるのか?

SARS-CoV-2(コロナウイルス)は、「ACE2受容体」を介して細胞に侵入します。甲状腺にもこの受容体が豊富に発現しているため、ウイルスによる直接的な炎症(サブアキュート甲状腺炎や無痛性甲状腺炎)が起こりうるのです。

この炎症により、一時的に甲状腺ホルモンが漏出し、甲状腺機能亢進症様の症状が出現します。ただし、ほとんどの場合、数週間から数か月で自然に回復します。

主な症状

  • 動悸、頻脈

  • 手指の振戦(ふるえ)

  • 発汗の増加、暑がり

  • 気分の不安定、不安感、イライラ

  • 疲労感、脱力感

  • 原因不明の体重減少

なお、甲状腺に痛みを伴わないタイプも多く、気づかれにくいことがあります。精神的症状が前景に立つ場合には、うつ病や不安障害と誤診される可能性もあります。

検査と診断

医療機関では以下の検査が行われます:

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン):低値

  • FT3、FT4(甲状腺ホルモン):上昇

  • 抗TPO抗体、抗Tg抗体:多くの場合陰性(自己免疫性疾患とは異なるため)

  • 炎症マーカー(CRPなど):軽度上昇のことあり

  • 甲状腺超音波検査:低エコー域、血流の変化がみられることも

治療方針

このような一過性の甲状腺機能異常は、通常は自然に改善することが多いため、経過観察が基本です。ただし、症状が強い場合には以下のような対症療法が行われます。

  • β遮断薬(例:プロプラノロール):動悸や振戦の軽減

  • NSAIDsまたはステロイド:炎症が強い場合に使用

まれに、数か月後に一過性の甲状腺機能低下症へ移行することがあり、定期的な血液検査によるフォローアップが推奨されます。

心の不調と甲状腺の関係

甲状腺ホルモンは脳内神経伝達物質にも影響を及ぼすため、不安・抑うつ・無気力といった精神症状が現れることがあります。
したがって、COVID-19から回復しているにもかかわらず心身の不調が続く場合には、甲状腺機能のチェックを考慮すべきです。

まとめ

  • コロナ後の「不調」は、甲状腺の一過性の炎症によるものかもしれません。

  • 血液検査で簡単に確認できるため、症状が続く場合は医師に相談しましょう。

  • 必要に応じて治療を受けつつ、経過観察によって自然回復が期待できる疾患です。

体と心、どちらも大切に

COVID-19後の体調不良は、気のせいや精神的な問題だけとは限りません。
「内科的な原因」も含めた視点での評価が、回復のカギになることがあります。