痛風について
痛風について
痛風は、体内で尿酸が過剰に生成され、関節に結晶として沈着することで引き起こされる炎症性疾患です。尿酸はプリン体の分解によって生成される代謝物で、通常は尿として排出されますが、過剰になると結晶化し、激しい痛みを伴う痛風発作を引き起こします。
尿酸の生理的役割
尿酸は体内で抗酸化物質として作用し、酸化ストレスから細胞を保護します。また、組織の損傷時には「アルミン」として機能し、炎症反応を通じて組織修復を促進します。さらに、神経系の保護にも寄与し、正常なレベルであれば神経細胞の健康を維持します。
痛風発作のメカニズム
痛風発作は、尿酸結晶が関節内に沈着し、マクロファージがこれを異物として認識することで始まる自然炎症です。マクロファージが尿酸結晶を取り込むと、ミトコンドリアの損傷が引き起こされ、さらにインフラマソームが形成されてインターロイキン1βが生成され、強い炎症が誘発されます。
果糖の危険性
果糖は尿酸の生成を促進し、痛風リスクを高めます。特に高果糖コーンシロップを含む食品の過剰摂取は、代謝疾患のリスクも増大させるため、注意が必要です。
尿酸と生活習慣病の関係
高尿酸血症は、痛風だけでなく、心血管疾患、糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患、慢性腎臓病など、さまざまな生活習慣病のリスク要因とされています。尿酸は血管を収縮させる一酸化窒素(NO)を不活性化し、高血圧やインスリン抵抗性を悪化させる可能性があります。
痛風の治療と予防
痛風の治療には、尿酸値を低下させる薬物療法やプリン体の摂取制限が効果的です。また、果糖の摂取を制限することで尿酸値を管理し、痛風やその他の代謝疾患を予防することが推奨されます。
まとめ
痛風は、単なる関節炎ではなく、体内の代謝バランスや生活習慣と深く関連した疾患です。尿酸の生理的役割を理解しつつ、その過剰によるリスクを適切に管理することで、痛風の発症を予防し、健康を維持することができます。日常生活での食事や生活習慣の見直しが、痛風予防の鍵となります。
新型コロナウイルス感染症第11波:現状と対策
新型コロナウイルス感染症第11波:現状と対策
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第11波の真っ只中にあります。当保健室では、2ヶ月前から第11波の始まりに向けてパンフレットを全患者さんに配布していました。今日の検査陽性率は、抗原検査及び簡易PCR検査を含めて約83%に達し、陽性者は5名、そのうち3名は家族内感染でした。
高齢者のケース
80代のご夫婦で、ワクチン未接種の方々が感染し、軽い症状ながら抗コロナ薬を希望されました。無事に治癒されることを願っています。COVID-19は特に脳神経の年齢を加速させる加齢因子であるため、軽い症状であっても長期的な影響に注意が必要です。
嗅覚障害と認知機能の低下
COVID-19感染後、嗅覚障害が続く場合、認知機能の低下を予測する重要な因子となることが分かっています。これにより、感染後も注意深い観察と適切なフォローアップが必要です。
難聴と認知症のリスク
韓国の研究によれば、20~39歳の成人において、COVID-19感染後の聴力喪失や感音性難聴のリスクが未感染者に比べて高いことが示されています。このデータは音楽界のみならず、一般の若い成人にとっても大問題です。COVID-19が難聴を通じて認知機能の低下を引き起こす可能性があるため、早期の対策が求められます。
結論
新型コロナウイルス感染症第11波において、感染予防と早期の治療が重要です。また、感染後の嗅覚障害や聴力喪失に対しても、認知機能低下のリスクを認識し、適切な対応が必要です。引き続き、感染対策を徹底し、健康を守りましょう。
参考資料
• Young adults at higher risk of hearing loss after COVID
難聴と認知症: 超高齢社会における課題と対策
難聴と認知症: 超高齢社会における課題と対策
日本は超高齢社会に突入し、高齢者の健康問題はますます深刻化しています。特に、難聴と認知症は大きな社会問題として認識されています。認知症は脳の変性により記憶や思考能力が低下する疾患ですが、最近の研究では、認知症の40%が予防可能であることが示されています 。その中でも、難聴は8%とかなりの割合を占めています 。
難聴の影響
難聴は単なる聴覚障害にとどまらず、コミュニケーションの障害や社会的孤立感を引き起こします。これが進行すると、妄想や幻聴といった精神的な問題も引き起こすことがあります。高齢者にとっては特に深刻で、日常生活における活動の低下や認知症のリスクを高める要因となります。
ケーススタディ: 難聴と認知症の関連
ある患者さんが運転免許証の更新時に認知症の疑いがあるとされ、当院に来院しました。この患者さんは難聴があり、会話が難しかったため、奥様が通訳として同伴しました。認知機能の評価としてMMSE、長谷川式、MoCa-Jなどの試験を実施しました。また、古河赤十字病院でMRIを施行し、脳神経外科の先生の診断で、異常なしとのことでした。詳しく見ると、海馬の萎縮はほとんどないが、白質病変が多く微小脳血管障害が疑われました。
補聴器を使用するようになってから、最も難しいMoCa-Jの試験で21点(正常範囲は26点以上)という結果を得ました。計算能力と視空間認知に難があるため、軽度認知障害と診断されました。このケースは、難聴が認知症評価において重要な要因であることを示しています。
難聴の予防と管理
難聴の危険因子には遺伝、後天的要因、環境因子があり、高血圧、糖尿病、脳血管障害、喫煙、騒音暴露などが含まれます。これらは生活習慣病と同様に血管系の障害として難聴悪化の主因となります。また、スマホや携帯型音楽プレーヤーもコントロール可能な危険因子です。
「聴こえ8030運動」といった活動は、80歳でも30dBの音が聴こえる聴力を維持することを目指しています。高齢者には定期的な聴力測定を行い、難聴予防の啓発が重要です。
結論
高齢社会において、難聴と認知症の関連性を理解し、早期に対策を講じることが重要です。補聴器の利用促進や生活習慣の改善を通じて、認知症の発症リスクを減少させることが期待されます。社会全体での意識向上と予防策の徹底が求められます。
アミロイドβの生体防御反応としての役割とアルツハイマー病の関係
アミロイドβの生体防御反応としての役割とアルツハイマー病の関係
アミロイドβの役割
アミロイドβ(Aβ)は、アルツハイマー病(AD)の主要な病理学的マーカーであり、老人斑として神経外に沈着します。近年の研究では、Aβが単なる「病的産物」ではなく、生体防御反応の一環として機能する可能性があることが示唆されています。
生体防御反応としてのアミロイド
• 抗菌・抗ウイルス作用: Aβは抗菌作用を持ち、細菌やウイルスに対して防御機能を果たすことが示されています。これにより、Aβが感染症に対する生体防御反応として生成されるという仮説が立てられています 。
• 炎症応答の調節: Aβの蓄積は局所的な炎症反応を引き起こし、異常蛋白を除去しようとする免疫応答を促進します。しかし、Aβの過剰生成や蓄積が持続すると、慢性炎症が引き起こされ、神経細胞の損傷が進行します 。
アルツハイマー病の治療と予防
• レカネマブの効果: レカネマブはAβに対するモノクロナール抗体で、Aβの凝縮抑制やミクログリアを介したアミロイドプラークの除去を行い、アルツハイマー病の進行を抑制します 。
• ワクチン接種と認知症リスクの低下: 帯状疱疹ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が、認知症のリスクを低下させるという報告があります。これにより、感染症予防が認知症予防に寄与する可能性が示唆されています 。
新型コロナウイルスと認知症
• COVID-19と神経炎症: 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、脳内に侵入し神経炎症を引き起こすことがあり、これが認知機能に悪影響を与える可能性があります。COVID-19感染が認知症リスクを増加させるかどうかについては、現在も研究が進行中です 。
結論
アミロイドβは感染に対する生体防御反応として機能する可能性があり、アルツハイマー病の病態形成に複雑に関与しています。このことから、アルツハイマー病の治療は単一の薬剤では難しく、包括的なアプローチが必要です。現在のところ、感染予防対策(ワクチン接種など)も認知症リスクの低下に有効であると考えられています。
臨床催眠と私
臨床催眠と私
日常的な催眠
催眠とは、意識の変容状態を意味しており、私たちは日常生活の中で自然に催眠状態に入ったり出たりしています。例えば、本に夢中になって時間を忘れたり、車を運転しながら無意識に目的地に到着することも、催眠の一形態です。こうした日常の中での催眠状態は、誰にとっても自然なものであり、特別な状況や場所が必要なわけではありません。
臨床での催眠
臨床の現場では、催眠は治療者の誘導によって現実意識の低下や特定の事象への没入を促す手法として用いられます。この催眠現象は、コミュニケーションのツールとして機能し、クライアントの持つ問題や症状の解決・改善を助けます。特に、リラクゼーション誘導は不安を和らげ、自律神経の調整や痛みのコントロールなどに有効です。また、カタレプシー誘導は疼痛コントロールを目的として用いられます。
創造的催眠
私が最も気に入っているのは、創造的催眠と呼ばれる誘導方法です。これは、クライアントの無意識的な創造力を引き出し、心身の調和を図るものです。心身症などの場合、客観的症状、心理社会的要因、無意識的要因の相互関係を調整するために、創造的催眠は非常に有効です。
家族との催眠体験
私の子供が小さかった頃、直接暗示や年齢退行の練習として、幻の苺を食べさせるといった楽しい催眠セッションを行ったこともあります。しかし、臨床の現場では直接暗示を用いることはほとんどありません。代わりに、依存状態を避けるために、自我強化を含めた後催眠暗示を多く用いるようにしています。
コロナ禍と催眠
2021年、久しぶりにZoomによる催眠講習会に参加しました。コロナ禍が始まってから、臨床催眠にかける時間が減少していましたが、この講習会を通じて改めて催眠の楽しさを再確認しました。しかし、現実にはコロナワクチン接種やコロナ診療に時間をとられ、催眠を実践する機会が少なくなっているのが現状です。
結論
催眠は、私にとって重要な治療手段であり、クライアントの心身の健康を支える大切なツールです。今後も時間を見つけて臨床催眠の技術を磨き、クライアントに寄り添った治療を提供していきたいと考えています。