2025-06-28 08:41:00

高齢者の「隠れビタミンB12不足」と認知機能低下の関係

高齢者の「隠れビタミンB12不足」と認知機能低下の関係

年齢を重ねると、「物忘れが増えた」「頭がスッキリしない」と感じることはありませんか? もしかすると、それは“隠れビタミンB12不足”が原因かもしれません。この記事では、ビタミンB12と脳の健康の深い関係について、わかりやすくご紹介します。

✅ ビタミンB12ってどんな栄養素?

ビタミンB12は、脳の神経を守ったり、記憶力や集中力を保つためにとても大切な栄養素です。体の中でDNAを作ったり、赤血球をつくる働きもあります。

しかし、加齢とともに、胃酸の分泌が減ったり、お薬(胃薬や糖尿病薬など)の影響で、食べ物からの吸収がうまくいかなくなることがあります。その結果、知らないうちに「ビタミンB12不足」になってしまう人が増えています。

🔍 「血液検査は正常」でも安心できない?

実は、通常の血液検査で測る「総ビタミンB12」は、体で使える形(活性型)と、使えない形(不活性型)の両方をまとめて測っているんです。つまり、

数値が正常でも、実際には体で使えるB12が足りていないことがあるのです!

最近の研究(Annals of Neurology, 2025年)では、使える形のB12(ホロトランスコバラミン)が少ない高齢者は、

  • 脳の白質が傷んでいたり

  • 認知速度や反応が遅くなったり

  • 視覚情報の処理に時間がかかったり

という問題があることが分かりました。

🧠 ビタミンB12が足りないと脳はどうなる?

B12が足りないと、神経のまわりを守っている「ミエリン鞘(しゃう)」が壊れてしまい、信号の伝達がうまくいかなくなります。その結果、

  • 物忘れが増える

  • ぼんやりする

  • 気分が落ち込む

など、認知症に似た症状が起こることも。

🩺 どうやってチェックできる?

日本でも一部の病院やクリニックでは「活性型ビタミンB12」を測る検査ができます(保険外・自費になることが多いです)。また、葉酸やホモシステインという項目もあわせて見ると、より正確な判断ができます。

🍽 食事やサプリでの対策は?

ビタミンB12は、主に動物性食品(レバー、赤身の肉、魚、卵など)に多く含まれます。ただし、高齢者では吸収力が落ちていることもあるので、

  • 舌下で吸収されるサプリ

  • 注射タイプ(病院で)

なども活用するとよいでしょう。特に「メチルコバラミン」という形が、神経の働きをサポートするとして注目されています。

🌟 まとめ:年齢とともに「隠れB12不足」に要注意!

高齢になると、ビタミンB12の不足に気づきにくくなりがち。でも、ちょっとした物忘れや集中力の低下が「栄養のサイン」かもしれません。

✔「検査は正常」と言われても安心せず、
✔活性型B12のチェックやサプリ活用を考えてみましょう!

脳の健康は、毎日の栄養から。気になる方は、医師や栄養の専門家に相談してみてくださいね。

🛡 免責事項

 

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、医学的アドバイスの代替を意図するものではありません。健康上の不安がある場合は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

2025-06-03 15:09:00

子どもの起立性調節障害とビタミンD 〜最新研究を踏まえた理解と対応〜

子どもの起立性調節障害とビタミンD 〜最新研究を踏まえた理解と対応〜

🧠 起立性調節障害(OD)とは?

  • 起立時に血圧や心拍数の調整がうまくいかず、

    • めまい

    • 立ちくらみ

    • 動悸

    • 倦怠感
      などの症状が出る状態

  • 学童期〜思春期に多く見られます

☀️ ビタミンDの役割

  • 骨を強くするだけでなく、

    • 免疫の調整

    • 神経機能のサポート

    • 自律神経のバランス調整
      に関与しています

🔬 最新研究の紹介(Front Pediatr. 2025)

  • ODの子ども84人と健常児84人を比較

  • 起立性調節障害のある群では、

    • ビタミンD(25(OH)D)濃度が有意に低い

    • 自律神経系の調整に関与する物質(ACE2・Ang(1–7))も低い

  • → ビタミンD欠乏が自律神経不調に関連する可能性

⚠️ 全てに当てはまるわけではない

  • 一部の研究(例:STURDY試験)ではビタミンD補充の効果が限定的

  • ビタミンDは "原因" ではなく "関連" にとどまる可能性も

  • 効果は個人差があるため、自己判断は禁物

✅ こんなときはビタミンD検査を検討

  • 朝がつらくて起きられない

  • 少しの動作で疲れやすい

  • めまいや集中力低下

  • 日光を浴びる時間が少ない

🍳 ビタミンDを補うには?

方法 内容例
日光浴 15〜30分、手足に日光を当てる
食事から摂取 鮭、サバ、卵黄、きのこ類など
サプリメント 医師と相談の上、800〜2000 IU/日

📌 まとめ

  • ビタミンDは、起立性調節障害の背景に関与する可能性あり

  • 必ずしも全例に当てはまるわけではなく、
    "必要な人に、必要なだけ" が基本

📎 免責事項

本資料は、教育・啓発目的で作成されたものであり、診断や治療を目的としたものではありません。実際の症状や治療方針については、必ず医療機関の専門医にご相談ください。

2025-05-28 08:29:00

「腸と脳はつながっている」——みかんと腸内細菌が“心の老化”を防ぐ可能性

 

🍊【医学的視点で読み解く】

「腸と脳はつながっている」——みかんと腸内細菌が“心の老化”を防ぐ可能性

🔍 はじめに:腸は“第二の脳”という真実

私たちの腸には、100兆個以上の腸内細菌が住み着いており、
単なる消化器官ではなく、免疫・代謝・さらには脳の機能にも深く関与しています。

こうした相互作用は「腸-脳相関(gut-brain axis)」と呼ばれ、
現在ではうつ病、認知症、フレイルなど、加齢に関連する疾患の新しい理解につながっています。

🧬 最新研究:柑橘類と“善玉菌”がうつ予防に?

2024年、ハーバード大学の研究チームが発表した注目の論文では、
柑橘類の摂取とうつ病リスクの低下が有意に関連していたことが明らかにされました。

🟧 研究の要点:

  • 約3万人を対象にした大規模データで、柑橘類の摂取量が多い人は、うつ病の発症リスクが22%低かった

  • 腸内細菌の中でもFaecalibacterium prausnitzii(F. prausnitzii)(ファエカリバクテリウム・プラウスニッツィー)の存在量が多い人ほど、うつ病の発症が少なかった。

  • この菌が生産する「SAM(S-アデノシルメチオニン)」が、脳内神経伝達物質のバランスを整える可能性が示唆された。

🦠 F. prausnitziiとは?抗炎症作用+神経機能サポート菌

F. prausnitziiは、抗炎症性短鎖脂肪酸(酪酸)を産生する善玉菌として知られ、
これまで炎症性腸疾患・糖尿病・肥満など加齢関連疾患との関係が研究されてきました。

本研究ではそれに加え、精神状態にも影響を与える可能性が浮上しています。

🔗 なぜ“腸内細菌”が“うつ”と関係するのか?

そのカギとなるのが、SAM(S-アデノシルメチオニン)という代謝物。

  • SAMは、セロトニン・ドーパミンの合成に不可欠なメチル供与体。

  • うつ病ではSAM濃度が低下していることが知られており、臨床的には補充療法も実施されています。

  • F. prausnitziiがこのSAMを腸内で生産していることが、今回の研究で明確に示されました。

🍊 柑橘類が持つ“機能性成分”が菌を育てる

柑橘類(オレンジ・グレープフルーツ等)には、

  • ナリンゲニン

  • フォルモノネチン
    といったフラボノイド系ポリフェノールが豊富に含まれており、
    これらがF. prausnitziiの増殖を促進するプレバイオティクス的役割を果たしていると考えられます。

📌 専門家がすすめる生活習慣3選

生活習慣 解説
🍊 毎日1〜2回、柑橘類を取り入れる 生の果実がベスト。ジュースは果糖に注意。
🥦 食物繊維をしっかり摂取 腸内細菌の主なエネルギー源。海藻・豆類も有効。
🚫 加工食品を控える 腸内環境悪化と炎症性サイトカイン増加の要因。

🧓 抗加齢医学の視点から見る本研究の意義

  • 腸内環境の変化は、加齢に伴う気分変調・認知機能低下に影響を与える可能性があります。

  • 今回の研究は、「加齢とともに変化する腸内細菌の構成を、食生活で修正できる」という希望を提示しています。

  • 医学的介入なしで、自然食品を通じた予防的アプローチが可能である点が大きな意義です。

📝 まとめ:みかんは“心と脳のサプリメント”

「うつは心の問題」とされてきた常識が、いま科学的に再定義されつつあります。

✅ 腸を整えることが、心を整える。
✅ 食事が、脳とメンタルに直接作用する。

みかんを手に取るとき、
それは単なる果物ではなく、“未来の自分”をケアする選択肢かもしれません。

🔗 出典

  • Samuthpongtorn C et al., Microbiome, 2024. PMID: 39543781

 

2025-05-05 10:12:00

心と体を整える新しい視点:機能性精神医学とは?

心と体を整える新しい視点:機能性精神医学とは?

今朝はウェブで、アメリカの精神科医ジェームズ・グリーンブラッド医師の講義を拝聴しました。
彼は『薬に頼らない個々に合ったうつ病治療』などの著書で知られ、精神疾患に対する栄養学的アプローチや統合医療の分野で世界的に高い評価を受けている医師です。

実は10年ほど前、彼が来日した際に東京で開催された講演会に参加したことがありました。そのときの感銘が忘れられず、今回改めて彼の講義に触れ、多くの気づきを得ました。

こうした経験を踏まえ、現代の日本における「心の医療」に、もうひとつの視点――機能性精神医学(Functional Psychiatry)――を提案したいと思います。

栄養不足が「心の不調」を引き起こす?

脳は、体重のわずか2%の器官でありながら、全身のエネルギーの20〜25%を消費しています。つまり、わずかな栄養の不足が、まず真っ先に脳に影響するのです。

以下のような栄養素は、脳と心の健康に深く関係しています:

  • ビタミンB12:不足すると疲労感、集中困難、不安、パニックなどが起こる

  • ビタミンD:気分の安定や免疫系に関与。現代日本では欠乏が非常に多い

  • マグネシウム:自律神経や睡眠、緊張緩和に重要

  • オメガ3脂肪酸:脳の構造と機能を支える。食の欧米化により不足傾向

  • アミノ酸:神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の材料になる

こうした栄養素が欠乏していないかを調べ、必要に応じて補うことは、症状の根本改善につながることがあります。

薬をやめたいけど、離脱症状がこわい方へ

「薬を減らそうとすると、かえって不安が増した」「頭が重くてやめられない」――こうした離脱症状には、個人差があります

同じ薬を飲んでいても、スムーズに減らせる人とそうでない人がいるのはなぜか?
答えは、その人の栄養状態や代謝の違いにあります。

たとえば、セロトニンを合成するにはビタミンB6やマグネシウム、鉄などが必要です。これらが不足していれば、薬の効果が出にくくなるだけでなく、減薬時の反応も悪くなります。

機能性精神医学では、こうした代謝経路や酵素の働きを血液検査や遺伝子検査などで確認し、個別に対応した減薬支援を行うことができます。

サプリメントにも注意が必要です

最近では「GLP-1が増える」「ADHDが治る」といったサプリメントが話題になっています。
しかし、SNSやネット広告で見かける情報には科学的根拠が乏しいものも多く、
「誰かに効いた」ものが「あなたに効く」とは限りません。

むしろ、体質に合わないサプリメントの使用は、不安や不眠を悪化させることすらあります。サプリも“薬と同じく慎重に使う”という意識が必要です。

日本でも始まっている「心と体を同時に診る医療」

日本でも、栄養療法や機能性医学を取り入れる医師やクリニックが増えてきました。

「精神症状=こころの病気」と決めつけず、「脳という臓器のコンディション」を調べてみる。
そんな発想から出発することで、薬だけに頼らない治療や、再発しにくい体質づくりが可能になります。

最後に:こんな方に知ってほしい視点です

  • 何をしても気分がすぐれないが、明確な病名がつかない方

  • 抗うつ薬・抗不安薬を減らしたいけど不安な方

  • パニック発作や不眠が慢性的に続いている方

  • 集中力の低下、物忘れ、気分の波に悩んでいる方

まずは血液検査からでもかまいません。心と体の“本当の関係”に気づくことで、新しい回復の道が開けるかもしれません。

 

この記事は情報提供を目的としており、診断や治療を代替するものではありません。症状に応じて専門医にご相談ください。

2025-04-26 08:55:00

なぜ魚を食べないと心も体も不調になるのか?

 

なぜ魚を食べないと心も体も不調になるのか?最新研究から読み解く

私たちの食生活は、心と体の健康に深く関わっています。
特に最近、魚介類の摂取量と心身の不調との間に密接な関係があることが、最新の日本の研究で明らかになりました。

今回ご紹介するのは、若い日本人女性を対象にした研究結果。
この研究では、「原因がはっきりしない体の不調(未特定の身体的訴え)」と「抑うつ症状」が、魚や貝類の摂取量とどう関係しているかが詳しく調べられました。

魚を食べない若い女性ほど、心身の不調が多かった

研究の結果、魚介類を食べる量が少ない人ほど、未特定の身体的な不調や抑うつ症状が重い傾向にあることが判明しました。

具体的には、

  • 体調不良や気分の落ち込みが少ないグループの魚介類摂取量は1日あたり約35g

  • 逆に、不調が強く抑うつ症状も重いグループでは、摂取量がわずか8g程度と、大きな差が見られたのです。

さらに、魚介類に多く含まれる以下の栄養素の摂取量も、不調の有無に応じて大きく違っていました。

  • EPA(エイコサペンタエン酸)

  • DHA(ドコサヘキサエン酸)

  • ビタミンD

  • ビタミンB₁₂

これらの栄養素は、いずれも脳の機能や免疫調整に重要な働きを持っており、不足すると心身の不調リスクが高まることがわかっています。

なぜ魚が重要なのか?科学的な背景

では、なぜ魚を食べることが心身の健康にこれほど重要なのでしょうか?

主な理由は次の3つです。

1. EPA・DHAが脳を守る

EPAやDHAは、魚油に豊富に含まれるオメガ-3脂肪酸です。
これらは脳細胞の膜成分となり、情報伝達をスムーズに保つ働きがあります。
また、炎症を抑える作用があり、慢性的な炎症が関与する抑うつ症状や未病を防ぐと考えられています。

2. ビタミンDの精神衛生作用

ビタミンDは「骨のビタミン」として有名ですが、近年は脳内の神経伝達物質の調整にも関わることが分かっています。
ビタミンD不足は、抑うつや不安症のリスクを高める要因の一つです。

3. ビタミンB₁₂の神経保護効果

ビタミンB₁₂は神経細胞の修復やエネルギー代謝に不可欠。
不足すると疲労感や集中力低下、メンタル不調を引き起こすリスクが高まります。

毎日の食事に、少しずつ魚を取り入れよう

今回の研究は、若い世代でも「魚不足」が心身に大きな影響を及ぼしていることを示唆しています。

忙しい現代生活の中でも、

  • 週に2~3回、焼き魚や煮魚を食べる

  • サバ缶やツナ缶を活用する

  • 刺身や寿司で手軽に取り入れる

といった工夫で、魚介類を無理なく食事に取り入れることが可能です。

「なんとなく体調が悪い」「気分が落ち込みやすい」という方は、ぜひ一度、食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
小さな積み重ねが、心と体の健やかさを守る力になります。

参考文献

  • Suzuki T, Yoshizawa Y, Takano S. Extent of Unidentified Complaints and Depression Is Inversely Associated with Fish and Shellfish Intake in Young Japanese Women. Nutrients. 2025;17(7):1252. DOI: 10.3390/nu17071252