心と体を整える新しい視点:機能性精神医学とは?
心と体を整える新しい視点:機能性精神医学とは?
今朝はウェブで、アメリカの精神科医ジェームズ・グリーンブラッド医師の講義を拝聴しました。
彼は『薬に頼らない個々に合ったうつ病治療』などの著書で知られ、精神疾患に対する栄養学的アプローチや統合医療の分野で世界的に高い評価を受けている医師です。
実は10年ほど前、彼が来日した際に東京で開催された講演会に参加したことがありました。そのときの感銘が忘れられず、今回改めて彼の講義に触れ、多くの気づきを得ました。
こうした経験を踏まえ、現代の日本における「心の医療」に、もうひとつの視点――機能性精神医学(Functional Psychiatry)――を提案したいと思います。
栄養不足が「心の不調」を引き起こす?
脳は、体重のわずか2%の器官でありながら、全身のエネルギーの20〜25%を消費しています。つまり、わずかな栄養の不足が、まず真っ先に脳に影響するのです。
以下のような栄養素は、脳と心の健康に深く関係しています:
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ビタミンB12:不足すると疲労感、集中困難、不安、パニックなどが起こる
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ビタミンD:気分の安定や免疫系に関与。現代日本では欠乏が非常に多い
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マグネシウム:自律神経や睡眠、緊張緩和に重要
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オメガ3脂肪酸:脳の構造と機能を支える。食の欧米化により不足傾向
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アミノ酸:神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の材料になる
こうした栄養素が欠乏していないかを調べ、必要に応じて補うことは、症状の根本改善につながることがあります。
薬をやめたいけど、離脱症状がこわい方へ
「薬を減らそうとすると、かえって不安が増した」「頭が重くてやめられない」――こうした離脱症状には、個人差があります。
同じ薬を飲んでいても、スムーズに減らせる人とそうでない人がいるのはなぜか?
答えは、その人の栄養状態や代謝の違いにあります。
たとえば、セロトニンを合成するにはビタミンB6やマグネシウム、鉄などが必要です。これらが不足していれば、薬の効果が出にくくなるだけでなく、減薬時の反応も悪くなります。
機能性精神医学では、こうした代謝経路や酵素の働きを血液検査や遺伝子検査などで確認し、個別に対応した減薬支援を行うことができます。
サプリメントにも注意が必要です
最近では「GLP-1が増える」「ADHDが治る」といったサプリメントが話題になっています。
しかし、SNSやネット広告で見かける情報には科学的根拠が乏しいものも多く、
「誰かに効いた」ものが「あなたに効く」とは限りません。
むしろ、体質に合わないサプリメントの使用は、不安や不眠を悪化させることすらあります。サプリも“薬と同じく慎重に使う”という意識が必要です。
日本でも始まっている「心と体を同時に診る医療」
日本でも、栄養療法や機能性医学を取り入れる医師やクリニックが増えてきました。
「精神症状=こころの病気」と決めつけず、「脳という臓器のコンディション」を調べてみる。
そんな発想から出発することで、薬だけに頼らない治療や、再発しにくい体質づくりが可能になります。
最後に:こんな方に知ってほしい視点です
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何をしても気分がすぐれないが、明確な病名がつかない方
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抗うつ薬・抗不安薬を減らしたいけど不安な方
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パニック発作や不眠が慢性的に続いている方
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集中力の低下、物忘れ、気分の波に悩んでいる方
まずは血液検査からでもかまいません。心と体の“本当の関係”に気づくことで、新しい回復の道が開けるかもしれません。
この記事は情報提供を目的としており、診断や治療を代替するものではありません。症状に応じて専門医にご相談ください。