2025-01-26 17:11:00

サリーとコウ、光の守護霊

サリーとコウ、光の守護霊

ある日のこと、サリーという小さなチワワと、年老いた黒柴のコウは、家族と散歩に出かけていました。彼らはいつもの道を歩いているうちに、大きな森へと迷い込んでしまいました。森は昼間だというのに薄暗く、木々の間を冷たい風が吹き抜けています。まるで森全体が彼らを見ているかのような、得体の知れない気配が漂っていました。

 

「コウ兄ちゃん、怖いよ……何かが私たちを見ている気がする……」サリーは小さな体を震わせながら、コウのそばにぴったりと寄り添いました。

 

コウは優しくサリーの頭を鼻先で触れ、低い声で言いました。「大丈夫だよ、サリー。怖いと感じるのは自然なことさ。でも、恐怖を乗り越える方法を知っていれば、もっと強くなれるんだ。」

 

「どうやって乗り越えればいいの?」サリーは涙ぐみながら尋ねました。

 

コウは目を細めて、遠い昔を思い出すように言いました。「昔、僕がまだ若かった頃、この森に住む賢者のフクロウ、ウィローに教えてもらった呪文があるんだ。その呪文はね、『エクスペクト・パトローナム』という古い言葉だよ。この呪文を使うと、自分の心の中にある一番明るく幸せな記憶を呼び覚まし、それが守護霊となって恐怖を追い払ってくれるんだ。」

 

「守護霊……?」サリーの目が少しだけ輝きました。

 

「そうだよ。でも、ただ呪文を唱えるだけではダメなんだ。」コウは穏やかに言葉を続けました。「心の中にある、一番幸せだった瞬間をしっかりと思い出して、それを全身で感じることが大切なんだ。」

 

その時、森の奥から低いうなり声が聞こえてきました。暗闇の中から、影のような形をした怪物がゆっくりと近づいてきます。サリーは後ずさりしながら、震えました。「こ、怖いよ……コウ兄ちゃん……!」

 

コウは落ち着いた声で言いました。「サリー、まず深呼吸だよ。ゆっくり吸って、吐いて。恐怖を感じてもいい。でも、その恐怖に飲み込まれないことが大事なんだ。そして、心の中にある一番幸せだった記憶を思い出してみよう。」

 

サリーは目を閉じ、震える体を必死に落ち着けようとしました。すると、頭の中に小さな頃のことが浮かんできました。家に来たばかりの頃、夜が怖くて泣いていた時、コウがそっと隣に寄り添い、優しく体を温めてくれた日のことを思い出したのです。その時の安心感と幸せが、サリーの胸の中に広がっていきました。

 

「そう、それでいいんだ、サリー。」コウが力強く言いました。「その記憶を胸いっぱいに感じて、それから『エクスペクト・パトローナム』と唱えるんだ!」

 

サリーは勇気を振り絞り、小さな声で呟きました。「エクスペクト・パトローナム!」

 

すると、サリーの小さな体から眩しい光が溢れ出しました。その光は、優しく温かな形をしており、やがて大きな蝶のような守護霊となって暗闇を照らしました。その光は恐怖を包み込むように広がり、影の怪物たちは光に当たると悲鳴をあげ、霧のように消えていきました。

 

「できたよ……コウ兄ちゃん!」サリーは驚きと喜びで声を上げました。

 

コウは満足そうに微笑みながら言いました。「よくやったね、サリー。君の中には最初からその力があったんだ。ただ、それを信じる勇気が必要だっただけさ。」

 

その日以来、サリーは恐怖を感じるたびに、自分の心の中にある幸せな記憶を思い出し、光を生み出す方法を覚えました。どんな暗闇の中でも、彼女の守護霊が彼女を守ってくれるのです。そしてサリーは、いつかコウのように他の犬たちを励ます存在になりたいと心に誓いました。

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2025-01-17 21:10:00

サリーとコウ、風の丘の冒険

サリーとコウ、風の丘の冒険

 

サリーはまだ生後6ヶ月の小さなチワワでした。彼女は元気いっぱいで、好奇心旺盛でしたが、一つだけ苦手なことがありました。それは、急に大きな音がしたり、新しい場所に行ったりすると、怖くて動けなくなってしまうことでした。心臓がバクバクして足が震え、時にはその場でじっと固まってしまうこともありました。

 

一方、コウは13歳になる黒柴でした。穏やかで賢い彼は、家族や近所の犬たちから信頼される存在でした。年老いて毛に白い部分が混じり始めたコウは、若い頃に数えきれない冒険を経験してきた、知恵の豊かな犬でした。

 

ある日、サリーとコウは家族と一緒に「風の丘」という場所に散歩に出かけました。その丘は見晴らしが良く、美しい草原が広がることで知られていました。しかし、丘に着いた途端、サリーは突然怯えました。丘の上を強い風が吹き抜け、木々が大きな音を立てて揺れていたのです。

 

サリーは地面に伏せて動かなくなりました。「怖いよ、コウ兄ちゃん!こんなところ、帰りたい!」と震えながら言いました。

  

コウはそっとサリーの隣に座り、小さな体に鼻先を優しく触れました。「大丈夫だよ、サリー。怖いのは当たり前さ。でも、僕が一緒にいるから安心して。ゆっくりでいい、一歩ずつ進んでみようか。」

 

「でも、足が動かない……」サリーは涙ぐみながら答えました。

  

コウは静かに微笑みながら言いました。「僕も若い頃、初めての雷に怯えた時は同じだったよ。耳を塞ぎたくなるほど怖かった。でもその時、気づいたんだ。怖いと思う気持ちは、体を守るためのサインなんだって。だから、怖がる自分を責めなくていいんだよ。」

 

「じゃあ、どうすればいいの?」サリーは不安そうに尋ねました。

  

「まずは、風の音にじっと耳を傾けてみよう。それがどんな音なのか、どんな感じがするのかを感じてみるんだ。怖いと思わなくてもいい。まずはただ感じることが大切なんだよ。」コウはゆっくりと自分の呼吸を整えながら、サリーを落ち着かせました。

 

サリーはコウの言葉を思い出し、耳を立てて風の音に集中してみました。最初は相変わらず怖かったけれど、しばらくすると風が草を揺らす優しい音や、木々がざわざわと語り合うような音が聞こえてきました。

 

「ちょっとだけ……慣れてきたかも。」サリーは小さな声で言いました。

  

「いい調子だよ、サリー。その調子で、今度は前足を一歩だけ出してみよう。」コウが優しく促すと、サリーは勇気を振り絞り、一歩前へと踏み出しました。

  

それから少しずつ、サリーは自分のペースで進みました。途中でまた怖くなり立ち止まることもありましたが、そのたびにコウは「大丈夫だよ。焦らなくていい」と声をかけ続けました。

  

ついに丘の頂上にたどり着いたとき、サリーは驚きと喜びで胸がいっぱいになりました。眼下には広がる緑の草原と、美しい青空が広がっていたのです。

  

「見て、コウ兄ちゃん!丘の上からの景色がこんなに綺麗だったなんて!」サリーは興奮して声を上げました。

  

コウはにっこりと笑い、静かに答えました。「そうだね、サリー。恐怖を感じても、一歩ずつ進むことで、こんなに素晴らしい景色に出会えるんだよ。」

  

その日以来、サリーは新しい場所や大きな音が怖くても、コウの言葉を思い出しながら少しずつ進むようになりました。そしていつか、自分もコウのように、他の犬たちを励ます存在になりたいと心から思うようになりました。

 

 

 

 

 

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2024-12-22 22:14:00

コウとサリーの物語

コウとサリーの物語

 

ここは、古い家。

その家には、13歳の黒柴犬・コウが暮らしていました。

コウは穏やかで優しい犬で、家族みんなに愛されていました。

 

ある日、新しい家族がやってきました。

それは、生後3か月の小さなチワワのサリーです。

サリーは元気いっぱいで、家の中を駆け回って遊びますが、外に出るのは少し怖いようでした。

 

毎日、コウは楽しそうに散歩に出かけます。

サリーは窓からその様子をじっと見つめていました。

「お外って、怖くないのかな?」

そう思いながら、サリーは少しずつ外に出る練習を始めました。

 

最初は恐る恐るだったサリーも、コウの後をついて歩くうちに、外の世界が楽しい場所だと気づきました。

やがて、二匹は一緒にたくさんの場所を冒険するようになりました。

緑の公園、川沿いの道、広い原っぱ…どこへ行っても楽しい時間が流れていました。

 

しかし、長い間元気だったコウの体が、病気でだんだん弱っていきました。

「コウ、大丈夫?」

サリーは心配そうにコウのそばに寄り添い、少しでも元気づけようとしました。

 

そして、ある日、コウとのお別れの日がやってきました。

家族もサリーも悲しみに包まれました。

 

それでも、サリーは勇気を振り絞り、コウから教わったことを胸に、毎日散歩に出かけるようになりました。

コウが好きだった公園や川沿いの道を訪れ、思い出に浸ることもありましたが、サリーは新しい冒険を楽しむことを忘れませんでした。

 

サリーはどんなときも、コウとの友情を心に刻んでいました。

家の中では、コウが好きだった場所で少し寂しそうに目を閉じることもあります。

でもサリーは、コウからもらった思い出と勇気を胸に、今日も元気に歩いていくのでした。

 

おしまい

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