なぜ魚を食べないと心も体も不調になるのか?
なぜ魚を食べないと心も体も不調になるのか?最新研究から読み解く
私たちの食生活は、心と体の健康に深く関わっています。
特に最近、魚介類の摂取量と心身の不調との間に密接な関係があることが、最新の日本の研究で明らかになりました。
今回ご紹介するのは、若い日本人女性を対象にした研究結果。
この研究では、「原因がはっきりしない体の不調(未特定の身体的訴え)」と「抑うつ症状」が、魚や貝類の摂取量とどう関係しているかが詳しく調べられました。
魚を食べない若い女性ほど、心身の不調が多かった
研究の結果、魚介類を食べる量が少ない人ほど、未特定の身体的な不調や抑うつ症状が重い傾向にあることが判明しました。
具体的には、
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体調不良や気分の落ち込みが少ないグループの魚介類摂取量は1日あたり約35g。
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逆に、不調が強く抑うつ症状も重いグループでは、摂取量がわずか8g程度と、大きな差が見られたのです。
さらに、魚介類に多く含まれる以下の栄養素の摂取量も、不調の有無に応じて大きく違っていました。
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EPA(エイコサペンタエン酸)
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DHA(ドコサヘキサエン酸)
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ビタミンD
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ビタミンB₁₂
これらの栄養素は、いずれも脳の機能や免疫調整に重要な働きを持っており、不足すると心身の不調リスクが高まることがわかっています。
なぜ魚が重要なのか?科学的な背景
では、なぜ魚を食べることが心身の健康にこれほど重要なのでしょうか?
主な理由は次の3つです。
1. EPA・DHAが脳を守る
EPAやDHAは、魚油に豊富に含まれるオメガ-3脂肪酸です。
これらは脳細胞の膜成分となり、情報伝達をスムーズに保つ働きがあります。
また、炎症を抑える作用があり、慢性的な炎症が関与する抑うつ症状や未病を防ぐと考えられています。
2. ビタミンDの精神衛生作用
ビタミンDは「骨のビタミン」として有名ですが、近年は脳内の神経伝達物質の調整にも関わることが分かっています。
ビタミンD不足は、抑うつや不安症のリスクを高める要因の一つです。
3. ビタミンB₁₂の神経保護効果
ビタミンB₁₂は神経細胞の修復やエネルギー代謝に不可欠。
不足すると疲労感や集中力低下、メンタル不調を引き起こすリスクが高まります。
毎日の食事に、少しずつ魚を取り入れよう
今回の研究は、若い世代でも「魚不足」が心身に大きな影響を及ぼしていることを示唆しています。
忙しい現代生活の中でも、
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週に2~3回、焼き魚や煮魚を食べる
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サバ缶やツナ缶を活用する
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刺身や寿司で手軽に取り入れる
といった工夫で、魚介類を無理なく食事に取り入れることが可能です。
「なんとなく体調が悪い」「気分が落ち込みやすい」という方は、ぜひ一度、食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
小さな積み重ねが、心と体の健やかさを守る力になります。
参考文献
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Suzuki T, Yoshizawa Y, Takano S. Extent of Unidentified Complaints and Depression Is Inversely Associated with Fish and Shellfish Intake in Young Japanese Women. Nutrients. 2025;17(7):1252. DOI: 10.3390/nu17071252