「じゃない腹痛」の意外な正体:ACNES(前皮神経絞扼症候群)とは?
「じゃない腹痛」の意外な正体:ACNES(前皮神経絞扼症候群)とは?
昨日の夜、病診連携でいつもお世話になっている友愛記念病院の地域医療カンファレンスに参加しました。
今回のテーマは「一般内科アラカルト」。演者の先生は一般内科の平岩正樹医師でした。
幅広い知識と独自の視点を持つ先生 であり、毎回その講義には圧倒されます。
その中でも特に印象的だったのが、「じゃない腹痛」というテーマです。
これは、消化器疾患ではないのに腹痛を引き起こす疾患 についての話でした。
今回紹介された疾患の中で、特に興味深かったのが ACNES(前皮神経絞扼症候群:Anterior Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome) です。
「原因不明の腹痛」として扱われることが多いACNESですが、適切な診断と治療で改善可能な疾患 でもあります。
1. ACNESとは?
ACNES(前皮神経絞扼症候群) は、腹部の筋膜を貫通する前皮神経が圧迫(絞扼)されることで発生する神経性の腹痛 です。
多くの患者は 「長引く腹痛があるのに、胃腸の検査では異常が見つからない」 という状態に陥ります。
そのため、過敏性腸症候群(IBS)やストレス性の腹痛と誤診 されやすいのが特徴です。
しかし、ACNESによる腹痛には消化器疾患とは異なる特徴 があります。
2. ACNESの症状と診断のポイント
✅ ACNESの特徴的な症状
- 腹部の限局した痛み(特にへそ周囲や下腹部)
- 圧痛がある(押すと痛みが強まる)
- 食事や排便の影響を受けない
- 横になると痛みが増すことがある
- 胃腸薬が効かない
- 画像検査(CT、エコー、内視鏡)では異常なし
✅ 診断のポイント
1. カーネット徴候(Carnett's Sign)の確認
-
方法:
患者が仰向けになり、医師が痛みの部位を押さえた状態で
① 頭を持ち上げる または ② 両足を浮かせる -
結果:
- 陽性:痛みが増す(ACNESの可能性が高い)
- 陰性:痛みが変わらない or 軽減(消化器疾患の可能性)
2. 局所麻酔ブロックテスト
- 圧痛点にリドカイン(局所麻酔薬)を注射
- 30分以内に 痛みが大幅に軽減すれば、ACNESの診断が確定
3. ACNESの治療法
ACNESは消化器疾患とは異なり、胃薬や整腸剤では改善しません。
原因が神経の絞扼であるため、治療も「神経ブロック」が中心 になります。
① 保存的治療(軽症の場合)
- 腹筋への負担を減らす(過度な運動を控える)
- 鎮痛薬(NSAIDs)の使用
- 物理療法(ストレッチ、リハビリ)
しかし、保存療法だけでは効果が不十分なことが多いです。
② 神経ブロック注射(第一選択)
- リドカイン+ステロイドの局所麻酔ブロック
- 診断の確定と同時に治療にもなる
- 効果が一時的なこともあるため、数回の注射が必要になることもある
③ エタノール注射(神経破壊ブロック)
- 局所麻酔ブロックの効果が 一時的にしか続かない場合 に適応
- 神経を不可逆的に破壊し、長期的な痛みの緩和を目指す
- 感覚鈍麻(しびれ)が残る可能性があるため、慎重な適応が必要
④ 外科的治療(最終手段)
- 神経切除術(Neurectomy)
- 上記の治療で改善しない場合に選択
- 圧迫されている神経を外科的に切除
- 成功率は高いが、術後にしびれが残る可能性がある
4. まとめ:ACNESは「見逃されやすい腹痛」
ACNESは、消化器疾患ではないが腹痛を引き起こす神経疾患 であり、適切に診断されれば治療が可能な疾患です。
✅ カーネット徴候陽性ならACNESの可能性が高い!
✅ 局所麻酔ブロックで診断が確定!
✅ 胃腸薬では治らない腹痛には、ACNESを疑うことが重要!
✅ エタノール注射や神経切除術で根治が可能!
「ずっと腹痛が続いているのに、検査では異常がない」
そんな悩みを抱えている方は、ACNESの可能性を考え、専門医に相談してみてください!
和食を最高の認知症予防食に!
和食を最高の認知症予防食に!
現代社会において、認知症は深刻な健康問題の一つとなっています。しかし、私たちの伝統的な「和食」こそが、認知症を予防する最適な食事法であることが、多くの研究によって示されています。本記事では、和食の特長と認知症予防効果について詳しく解説し、具体的な実践方法を紹介します。
和食が認知症予防に優れる理由
-
DHA・EPAが豊富な魚介類
和食では、青魚(サバ、イワシ、サンマなど)がよく食べられます。これらにはDHAやEPAが豊富に含まれ、脳の炎症を抑え、神経細胞の機能をサポートする効果があります。認知機能の低下を防ぐために、週に2〜3回の摂取が推奨されます。 -
発酵食品で腸内環境を改善
味噌、納豆、漬物、ぬか漬けなどの発酵食品は、腸内細菌のバランスを整え、脳と腸をつなぐ「腸脳相関」を強化します。近年、腸内環境が認知症予防に大きく関与していることが明らかになっており、発酵食品を日常的に摂ることで、脳機能の維持に寄与すると考えられています。 -
低糖質・高栄養価の食事構成
和食の基本は「一汁三菜」であり、米や味噌汁、魚、野菜、豆類がバランスよく組み合わされています。特に、玄米や雑穀米を選ぶことで、血糖値の急上昇を抑え、糖化ストレスを軽減できます。これにより、アルツハイマー型認知症のリスクを下げることができます。 -
ポリフェノール・ビタミン豊富な食材
緑黄色野菜(ほうれん草、小松菜、にんじんなど)、海藻類、きのこ類には、抗酸化作用の強いポリフェノールやビタミンが豊富に含まれています。これらの成分は、脳細胞の酸化ストレスを防ぎ、老化を抑える役割を果たします。 -
塩分・糖分を控えめにする工夫
和食は健康的な食事ですが、味噌や醤油、漬物など塩分が高くなりがちです。減塩タイプの調味料を使用したり、薄味を意識することが大切です。また、煮物や甘い味付けの料理では、砂糖の使用を控え、天然の甘み(みりんや出汁)を活用することで、健康的な和食を楽しめます。
和食を活かした具体的な食事法
-
朝食に味噌汁+納豆ご飯
味噌汁は発酵食品として腸内環境を整え、納豆はビタミンK2を多く含み、脳の健康維持に役立ちます。ただし、味噌汁は減塩味噌を使用し、具材を増やすことで塩分を抑えましょう。 -
昼食に魚中心の定食
焼き魚、煮魚などを中心に、野菜のお浸しや海藻サラダを組み合わせることで、DHA・EPA、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取できます。煮魚のタレには砂糖を控えめにし、出汁の旨味を活かしましょう。 -
夕食は低糖質&発酵食品を意識
糖質を控えめにし、豆腐、キノコ、海藻、発酵食品を使った料理を取り入れることで、血糖値の安定と脳の健康をサポートします。漬物を食べる際は塩分に注意し、食べ過ぎに気をつけましょう。
まとめ
和食は、DHA・EPA、発酵食品、抗酸化成分を多く含み、血糖値の急上昇を防ぐことで、認知症予防に最適な食事法です。ただし、塩分や糖分を控えめにする工夫を取り入れることで、さらに健康的な食生活が実現できます。日々の食生活に意識的に取り入れることで、脳の健康を守り、認知機能の低下を防ぐことができます。和食の力を活かし、健やかな未来を築きましょう!
タダラフィルと2型糖尿病:適応外使用はできないが、前立腺肥大の治療患者には良い影響も?
ヘルシーエイジングの科学:老化は時間の問題ではない
ヘルシーエイジングの科学:老化は時間の問題ではない
老化は避けられないものですが、どのように老いるかは私たちの選択次第です。
慶應義塾大学の伊藤裕先生、白澤卓二先生をはじめとする抗加齢医学の専門家の研究によると、老化は単なる時間の経過ではなく、生活習慣の積み重ねによって大きく左右されることが分かっています。
ここでは、「老化負債」の概念をもとに、44歳と60歳の節目にどのようなギアチェンジを行うべきか、そして健康寿命を延ばすための具体的な戦略を解説します。
1. 老化を支配するのは「時間」だけではない:老化負債とは?
老化には 「生理的老化」 と 「加速老化(病的老化)」 があります。
- 生理的老化:年齢とともに起こる自然な変化(筋肉量の減少、ホルモンの変動など)。
- 加速老化(病的老化):生活習慣の影響で必要以上に早まる老化(動脈硬化、糖尿病、フレイルなど)。
特に重要なのが 「老化負債(Aging Debt)」 です。
これは、若い頃の生活習慣のツケが、後になって病気や機能低下として表れるという考え方です。
✅ 「若いうちは問題ない」と思っていたことが、後で大きな健康リスクになる
✅ 老化は時間によるものではなく、過去の選択の積み重ねが影響する
では、老化負債を減らし、健康寿命を延ばすにはどうすればよいのでしょうか?
その答えのカギを握るのが 44歳と60歳の節目でのギアチェンジ です。
2. 人生には節目がある:44歳と60歳のギアチェンジが鍵
老化負債を減らすためには、人生の節目ごとに適切な対策をとることが重要です。
特に、44歳と60歳 は大きな転換点になります。
① 44歳:代謝とホルモン変化に適応する時期
40代半ばになると、体内で次のような変化が始まります。
- 成長ホルモンの低下 → 代謝が落ち、太りやすくなる
- 男性ホルモン・女性ホルモンの減少 → 筋肉量の低下、精神的な不安定さ
- 血糖値の調整能力の低下 → インスリン抵抗性の増加、糖尿病リスクの上昇
- 血管の老化が進む → 動脈硬化、高血圧のリスクが増加
この時期に適切な対策をとることで、50代以降の健康状態を大きく改善できます。
44歳から意識すべきこと
✅ 筋肉量の維持(スクワット、レジスタンストレーニングを習慣化)
✅ 血糖値コントロール(糖質の質と量を考えた食生活)
✅ 良質な脂質を摂取(オメガ3脂肪酸、MCTオイルの活用)
✅ ストレスマネジメント(睡眠の質向上、マインドフルネス)
「40代はまだ若い」と思いがちですが、ここでの選択が今後の健康を決定づけます。
② 60歳:病的老化の分岐点
60歳を迎えると、「病的老化」に進むかどうかの分かれ道に立ちます。
この時期に特に問題となるのが フレイル(虚弱) です。
フレイルの三大要素
- 筋力低下(サルコペニア) → 歩行スピード低下、転倒リスク増加
- 代謝機能の低下 → 内臓脂肪の増加、糖尿病や高血圧のリスク増加
- 認知機能の低下 → アルツハイマー病や軽度認知障害(MCI)のリスク上昇
この段階での対策が、健康寿命を決定づけます。
60歳から意識すべきこと
✅ たんぱく質摂取量を増やす(体重1kgあたり1.2〜1.5g)
✅ 有酸素運動と筋トレを組み合わせる(週150分の中強度運動)
✅ 認知機能を鍛える(新しい挑戦、社交性を維持)
✅ MCTオイル・ケトン体の活用(認知症予防)
「もう年だから」と諦めるのではなく、「これからの10年をどう生きるか」を考える時期です。
3. ヘルシーエイジングの5つのコツ
✅ 1️⃣ 筋肉を維持する:動かないことが最大の老化要因
- 筋トレ+ウォーキングで、加齢による筋力低下を防ぐ
✅ 2️⃣ 血糖値をコントロールする:糖化が老化を加速
- 低GI食品を中心に、糖質の質と量を調整
✅ 3️⃣ 良質な脂質を摂る:オメガ3・MCTオイルの活用
- 炎症を抑え、脳と血管の健康を維持
✅ 4️⃣ 腸内環境を整える:腸は「第二の脳」
- 発酵食品+食物繊維で、腸内細菌バランスを整える
✅ 5️⃣ ストレスマネジメント:副腎疲労を防ぐ
- 瞑想、マインドフルネス、睡眠の質を向上
まとめ:ギアチェンジで老化をコントロールする
✅ 老化は時間の問題ではない。過去の生活習慣の積み重ねが影響する。
✅ 44歳と60歳の節目で適切なギアチェンジを行えば、老化負債を減らし、健康寿命を延ばせる。
✅ 科学的に証明された運動・食事・認知機能維持策を取り入れることで、病的老化を防ぐことができる。
「老化は避けられないが、その進行を遅らせることはできる。」
今日からできることを一つずつ始めてみましょう!
「親子別姓 あなたはどこの子?」
「親子別姓 あなたはどこの子?」
選択的夫婦別姓の議論が喧しい。どうにも急ぎすぎる。かつては慎重派だったはずの自民党も、保守系議員をことごとく狙い撃ちにし、先の選挙でまとめて落選させた。「慎重に議論すべき」と言った者が消えれば、残るのは「早く決めろ」の声だけ。なるほど、これで「国民の総意」のできあがりである。
だが、一体何をそんなに急ぐのか。急ぐ理由があるのは分かる。ある者にとっては「個人の自由の拡大」、ある者にとっては「男女平等の実現」だという。だが、本当の理由はもっと別のところにあるのではないか。
「家族」というのは、個人の最後の砦である。
かつて共産主義が隆盛を極めた時代、どの国でも最初に狙われたのは「家族」だった。家族がしっかりしていると、人間はなかなか「理念」では動かない。「共産主義はすばらしい」と言われても、「いや、うちの親父のほうが信用できる」と思ってしまう。それでは困るから、まずは家族の結びつきを緩め、バラバラにする。そうすれば、国家や理念への依存度が増し、支配がしやすくなる。
夫婦別姓の議論も、結局はそこに行き着く。もちろん、個々の事情で別姓を望む人もいるだろう。それはそれで分かる。だが、それを「社会全体の当然の流れ」として推し進めるのは、また別の話だ。
名前とは、単なるラベルではない。それは人間関係の最小単位を示す「記号」でもある。夫婦が同じ姓を名乗ることで、「この人はこの家族に属する」という明確なサインができる。それが、別姓になればどうなるか。
夫婦別姓が当たり前になり、さらに時が経てば、次は「親子別姓」になる。親子別姓が普通になれば、今度は「そもそも姓は必要なのか」という話になる。「姓のない社会」を考えたことがあるか? ある日突然、「あなたの苗字は廃止されました」と言われたらどう思うか?
姓は単なる記号ではない。家族という単位の可視化であり、個人を社会のなかに位置づけるものだ。それを消してしまえば、家族も社会も個人も、「どこにも属さない存在」になる。
「個人の自由を拡大する」と言っていたら、気がつけば何の絆もない社会ができあがる。
今の時代、人間関係はどんどん希薄になり、個人はアトム化している。「自由だ、平等だ、多様性だ」と言いながら、実際には「どこにも属さない、誰ともつながらない、理念だけで操作しやすい個人」を量産しているのだ。
だから、連中にとって商機なのである。名前をバラバラにし、家族をバラバラにし、個人を「ただの点」にしてしまえば、後は「正しい理念」を吹き込むだけで、人間は簡単に動く。自分の所属を失った個人ほど、権威に従順なものはない。
やがて姓すら不要になり、「名前だけの社会」が訪れるかもしれない。もっと進めば、今度は「名前も要らない」となる。「ナンバーで十分」という話が出てくる。すると、人間は「個人情報の集合体」になる。そうなれば、もはや管理は完璧である。
歴史のなかで積み重ねられてきた「家族」の知恵が、一気に崩れ去る日が来るのではないか。名前もなく、つながりもなく、誰の子かも分からない。そんな社会を望む人がいるのだろうか?
昔のご隠居なら、こう嗤ったに違いない。
「自由が増えたと思っていたら、どこにも帰れなくなっていた。これが進歩の果てかね」と。