味覚障害と亜鉛 ~「味が分かりにくい」は体からのサインかもしれません~
味覚障害と亜鉛
~「味が分かりにくい」は体からのサインかもしれません~
この記事でわかること
・味覚障害の主な原因
・亜鉛と味覚の深い関係
・亜鉛以外に不足すると味覚障害を起こす栄養素
・味覚障害の検査と治療
・受診の目安
はじめに
「最近、食事がおいしく感じない」「味が薄く感じる」「しょうゆや塩を以前より多く使うようになった」──そんな症状はありませんか?
味覚障害は加齢だけが原因ではありません。亜鉛不足をはじめ、糖尿病、新型コロナウイルス感染後、薬の副作用、栄養不足など、さまざまな原因で起こります。
味覚は食事の楽しみだけでなく、栄養状態や健康状態を映し出す大切なサインです。
味覚はどのように感じているのでしょうか?
舌には「味蕾(みらい)」という味覚センサーがあります。
味蕾の中にある味細胞は、
・甘味
・塩味
・酸味
・苦味
・うま味
を感じています。
味細胞は、およそ10日~2週間ごとに新しい細胞へ生まれ変わっています。
この新陳代謝を支えている重要なミネラルが亜鉛です。
亜鉛が不足すると、
味細胞が十分に作られない
↓
味を感じる力が低下する
↓
味覚障害
という流れになります。
また、亜鉛は唾液中の酵素(炭酸脱水酵素VI:CA VI)の働きにも関わり、味蕾が正常に働くことを助けています。
味覚障害の原因
味覚障害の原因は一つではありません。
・亜鉛不足
・鉄不足
・ビタミンB12不足
・葉酸不足
・糖尿病
・新型コロナウイルス感染後
・薬の副作用
・口の乾燥(ドライマウス)
・加齢
・神経の病気
・脳の病気
また、「味が分からない」と感じても、実際には嗅覚障害が原因となっていることも少なくありません。
こんな症状はありませんか?
□ 食事がおいしくない
□ 味が薄く感じる
□ 塩やしょうゆを以前より多く使う
□ 食欲が落ちた
□ 口の中が苦い
□ 舌がヒリヒリする
□ 口内炎を繰り返す
どんな検査をするの?
味覚障害が疑われる場合には、
・症状やお薬の確認
・口の中の診察
・血液検査
などを行い、原因を調べます。
血液検査では必要に応じて
・亜鉛
・鉄・フェリチン
・ビタミンB12
・葉酸
・銅
・HbA1c(糖尿病)
・甲状腺機能
などを確認します。
※現在、当院では味覚検査および嗅覚検査は実施しておりません。必要に応じて耳鼻咽喉科などの専門医療機関をご紹介いたします。
治療
原因によって治療は異なります。
① 亜鉛不足
低亜鉛血症と診断された場合には、医療用亜鉛製剤による治療を検討します。
② 栄養不足
鉄やビタミンB12、葉酸など、不足している栄養素を補います。
③ 原因となる病気の治療
糖尿病や口腔乾燥、感染症など、それぞれの原因に応じた治療を行います。
④ 薬剤の見直し
副作用が疑われる場合は、自己判断で中止せず、主治医と相談しながら対応します。
日常生活で気をつけたいこと
・バランスの良い食事を心がける
・肉・魚・卵・大豆製品を十分に摂る
・極端なダイエットを避ける
・口腔内を清潔に保つ
・禁煙を心がける
・十分な水分を摂る
亜鉛を多く含む食品として
・牡蠣
・牛肉
・赤身肉
・チーズ
・大豆製品
・ナッツ類
などがあります。
よくある質問
Q.亜鉛サプリメントだけで治りますか?
軽い亜鉛不足では役立つこともありますが、味覚障害の原因は亜鉛不足だけではありません。症状が続く場合は原因を調べることが大切です。
Q.どれくらいで改善しますか?
味細胞は約10日~2週間ごとに新しく生まれ変わります。原因によって異なりますが、亜鉛不足による味覚障害では、改善まで数週間から数か月かかることがあります。
Q.亜鉛をたくさん飲めば早く治りますか?
いいえ。
亜鉛を過剰に摂取すると銅欠乏や貧血などを起こすことがあります。
自己判断で大量に服用することは避けましょう。
まとめ
✓ 味覚障害の代表的な原因の一つが亜鉛不足です。
✓ 味細胞は約10日~2週間ごとに生まれ変わり、その働きに亜鉛が重要です。
✓ 味覚障害の原因は、亜鉛不足だけではなく、鉄・ビタミンB12・葉酸不足、糖尿病、薬剤、新型コロナウイルス感染後などさまざまです。
✓ 症状が続く場合は、自己判断せず、原因を調べることが大切です。
保健室からひとこと
「味が分かりにくい」「食事がおいしく感じない」という症状は、栄養不足や全身の病気のサインであることがあります。
当院では、血液検査などを通して原因を調べ、亜鉛だけでなく鉄やビタミンB12などの栄養状態、糖尿病や服用中のお薬なども含めて総合的に評価し、一人ひとりに合った治療をご提案しています。
気になる症状が続く場合は、お気軽にご相談ください。
参考文献
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「味覚障害診療の手引き」
・日本臨床栄養学会・日本病態栄養学会「亜鉛欠乏症診療ガイドライン」
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
免責事項
本記事は、味覚障害や亜鉛に関する一般的な医学情報を分かりやすくご紹介することを目的としています。症状や治療法は、年齢、基礎疾患、お薬の内容、栄養状態などによって異なり、すべての方に当てはまるものではありません。
味覚障害の原因には、亜鉛不足のほか、鉄やビタミンB12などの栄養不足、糖尿病、感染症、薬剤、口腔疾患、神経疾患などさまざまなものがあります。自己判断でサプリメントや医薬品を開始・中止することは避け、症状が続く場合は医療機関へご相談ください。
本記事は掲載時点の医学的知見に基づいて作成していますが、医学の進歩や診療ガイドラインの改訂により内容が変更される場合があります。
