認知症予防の新しい考え方 ― 「和MIND食」を始めます ― 最新研究から見えてきた「炎症を抑える食事」の可能性 ―
認知症予防の新しい考え方 ― 「和MIND食」を始めます
― 最新研究から見えてきた「炎症を抑える食事」の可能性 ―
「料理は薬ではない。しかし、身体への情報である。」
私は日頃から、このように考えています。
認知症は、薬だけで防げる病気ではありません。
だからといって、「もう何もできない」というわけでもありません。
私たちが毎日口にする食べ物は、単に空腹を満たすものではありません。食事は腸内細菌や免疫、血糖、血管、そして脳へと絶えず情報を送り続けています。
近年、この考え方を裏付ける研究が次々と報告されています。そして今回、認知症予防の分野でも希望の持てる研究が発表されました。
脳に変化が始まっていても、食事はまだ間に合うかもしれない
2026年、JAMA Network Open に掲載された研究では、スウェーデンの60歳以上の住民1,865人(認知症のない成人)を最長15年間追跡しました。
カロリンスカ研究所の研究チームは、アルツハイマー病の血液マーカー(p-tau217、NfL、GFAP)がすでに高い人でも、炎症を起こしにくい食事を続けていた人ほど認知症を発症しにくいことを報告しました。
もちろん、この研究だけで「食事が認知症を防ぐ」と結論づけることはできません。観察研究であり、因果関係を証明したものではないからです。
しかし、この研究は私たちに大切なメッセージを伝えています。
脳の変化が始まっていても、生活習慣を見直す意味はあるかもしれない。
これは認知症予防に取り組む私たちにとって、大きな希望と言えるでしょう。
認知症は「脳だけ」の病気ではありません
アルツハイマー病というと、「アミロイド」という言葉を耳にする機会が増えました。
しかし現在では、認知症は一つの原因だけで起こる病気ではないと考えられています。
その背景には、
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慢性的な炎症
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動脈硬化や血管障害
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糖尿病・インスリン抵抗性
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腸内細菌の乱れ
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睡眠障害
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運動不足
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社会的孤立
など、全身に関わるさまざまな要因があります。
私は、
認知症は「脳だけの病気」ではなく、「全身の健康が最後に脳へ映し出される病気」
だと考えています。
腸、免疫、血管、筋肉、睡眠、そして社会とのつながり。
これらが互いに影響し合いながら、未来の脳をつくっているのです。
注目すべきは「抗炎症」という考え方
今回の研究が評価したのは、特定の食品ではありません。
「炎症を起こしにくい食事パターン」
です。
私は、この視点がこれからの認知症予防に最も重要だと考えています。
食品には流行があります。しかし、脳が本当に求めているのは流行の食品ではなく、
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炎症を抑える
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血管を守る
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血糖値を安定させる
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腸内環境を整える
という、生物学的な働きです。
この視点は、これからご紹介する「和MIND食の7つの柱」にもそのままつながっています。
日本人には、日本人に合った認知症予防食がある
認知症予防として有名なのが、MIND食や地中海食です。
どちらも優れた食事法ですが、そのまま日本人の食生活に取り入れるのは必ずしも容易ではありません。
私は以前から、
「日本人には、日本人の身体と文化に合った認知症予防食があってよいのではないか」
と考えてきました。
日本には、
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青魚
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大豆食品
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納豆・味噌などの発酵食品
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海藻
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きのこ
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緑茶
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季節の野菜
という、世界に誇れる食文化があります。
これらは近年の研究でも、抗炎症作用や血管保護作用との関連が報告されている食品です。
私は、日本の食文化と最新の医学を組み合わせた認知症予防の考え方として、
「和MIND食」
を提案したいと思います。
和MIND食の7つの柱
和MIND食は、特別な健康食品ではありません。
毎日の食卓を少し整えるための「考え方」です。
① 炎症を抑える
青魚、えごま油、オリーブオイル、緑黄色野菜などを取り入れ、体の慢性炎症を抑えます。
② 腸内環境を育てる
納豆、味噌、海藻、きのこ、食物繊維などで腸内細菌を元気にします。
③ 血糖値を安定させる
白米や糖質は適量に。野菜から食べるなど「食べる順番」も大切です。糖尿病などで治療中の方は、主治医と相談しながら取り組みましょう。
④ 神経の栄養を補う
DHA、ビタミンB群、葉酸、ビタミンD、マグネシウムなど、脳の材料となる栄養素を意識します。
⑤ 筋肉を守る
魚、卵、大豆など、良質なたんぱく質を毎日しっかり摂り、フレイルを予防します。
⑥ 血管を守る
減塩を心掛け、高血圧・糖尿病・脂質異常症を適切に管理します。
⑦ 楽しく続ける
我慢する健康法は長続きしません。家族や仲間と食事を楽しみながら、無理なく続けることを大切にします。
食べることは、未来の脳への投資
今日の一食は、明日の血糖を変えます。
一週間の食事は、腸内環境を変えます。
一年の積み重ねは、血管を変えます。
そして、その積み重ねが、未来の脳をつくります。
だから私は、
「食べることは、未来の脳への投資である」
と考えています。
和MIND食とは、日本人の食文化を大切にしながら、科学的な視点で未来の脳を守ろうという、新しい暮らし方の提案です。
おわりに
認知症予防とは、特別な健康法を探すことではありません。
毎日の暮らしを少しずつ整えることです。
そして、その第一歩は毎日の食卓にあります。
これから、このブログでは不定期に「和MIND食」をシリーズとしてご紹介していきます。
次回は、和MIND食の中心ともいえる「なぜ「DHAだけ」では認知症は防げないのか」について、最新の研究を交えながら分かりやすく解説したいと思います。
未来の脳は、今日の食卓から育ちます。
ぜひ、一緒に「和MIND食」を始めてみませんか。
出典
Mrhar A, et al. Diet Quality and Dementia Risk in Older Adults With Alzheimer Pathology. JAMA Network Open. 2026;9(6):e2620254. doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.20254(2026年6月25日オンライン公開)
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。持病のある方や治療中の方は、自己判断で食事内容を大きく変更せず、主治医にご相談ください。
