「薬価で頭が痛い。でも人生は変わった」― ナルティークと片頭痛治療
「薬価で頭が痛い。でも人生は変わった」― ナルティークと片頭痛治療
「先生、この薬は高いですね。」
ナルティーク(リメゲパント)を処方した患者さんが、苦笑しながらそう言いました。
確かにその通りです。
新しい片頭痛治療薬であるナルティークは、決して安価な薬ではありません。
しかし、その患者さんは続けてこう言いました。
「でも、人生は変わりました。」
町の保健室長として印象に残る言葉でした。
「ただの頭痛」ではない
この患者さんは長年片頭痛に悩まされていました。
頭痛発作の日だけが辛いわけではありません。
「明日また頭痛になるのではないか」
という不安が常にありました。
旅行の予定を立てる。
友人と約束する。
仕事の予定を入れる。
そうした日常の行動にも、いつも片頭痛の影がつきまとっていました。
初診時のHIT-6(頭痛による生活障害の評価尺度)は66点でした。
HIT-6は60点以上で「重度の生活障害」と評価されます。
つまり、頭痛が生活の質(QOL)を大きく損なっている状態です。
ナルティーク導入後
ナルティークを使用してから、頭痛の頻度と強さが明らかに改善しました。
もちろん、すべての頭痛がゼロになったわけではありません。
しかし、
「頭痛に振り回される日」
が大幅に減ったのです。
以前なら諦めていた外出ができる。
仕事に集中できる。
家族との時間を楽しめる。
患者さん自身が最も喜んでいたのは、
「頭痛を心配する時間が減ったこと」
でした。
片頭痛は脳の病気
昔は片頭痛を「血管が拡張する病気」と考える時代もありました。
しかし現在では、
三叉神経系やCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が関与する、
脳の痛みネットワークの過敏化によって起こる神経疾患と考えられています。
ナルティークは、このCGRPの働きを抑えることで、痛みの伝達を弱める薬です。
片頭痛治療はここ10年ほどで大きく進歩しました。
お財布は痛い
ただし、現実的な問題があります。
薬価です。
患者さんの言う通り、お財布には優しくありません。
保健室長としても、
「よく効くけれど高い」
という悩ましい薬の一つです。
しかし別の見方もできます。
頭痛で失われていた時間。
頭痛で諦めていた楽しみ。
頭痛で制限されていた人生。
もしそれらを取り戻せるなら、その価値は薬価だけでは測れないかもしれません。
おわりに
もちろん、ナルティークがすべての片頭痛患者さんに必要なわけではありません。
従来の治療で十分改善する方もいます。
一方で、これまでの治療では十分な効果が得られなかった方にとっては、新しい選択肢になる可能性があります。
「薬価で頭が痛い。」
患者さんはそう言って笑いました。
しかし、その表情は以前よりずっと明るく見えました。
医療の価値とは何か。
QOLとは何か。
そんなことを改めて考えさせてくれた診療の一コマでした。
片頭痛には「万能薬」はありません。
ナルティークが劇的に効く方もいれば、別の治療法が合う方もいます。
私たちの仕事は、頭痛そのものだけでなく、その人の生活、体質、背景を含めて最適な治療法を一緒に探していくことだと考えています。
