新型コロナやインフルエンザの後、肺は元に戻るのでしょうか?
新型コロナやインフルエンザの後、肺は元に戻るのでしょうか?
―感染後の肺の回復について、最近の研究からわかったこと
多くの人は感染症から回復します。しかし、一部の人では肺の炎症や傷害の影響が長く残ることがあります。
新型コロナやインフルエンザに感染して、熱も下がり、体調も回復した。それでも咳が続いたり、以前より階段で息切れしたりすることがあります。
こうした症状にはさまざまな原因があり、必ずしも肺に重大な異常が残っているわけではありません。
今回は、感染後の肺の変化について、医学研究からわかっていることをご紹介します。
新型コロナ感染後、肺線維症の診断が増える?
2026年、米国の研究グループが、国際医学誌『Respiratory Research』に新型コロナ感染後の肺の状態を調べた研究を発表しました。
この研究では、新型コロナ感染者61,428人を含む診療記録を解析し、最大4年半の観察期間中に新たに肺線維症と診断された人を調べています。
肺線維症とは、肺の組織に線維化が生じ、肺が硬くなったり、酸素を取り込む働きが低下したりすることのある病気です。
入院しなかった新型コロナ感染者では、観察期間中に肺線維症と診断された人の割合は次のとおりでした。
| 対象 | 肺線維症の診断割合 |
|---|---|
| 新型コロナ感染者(非入院) | 0.35% |
| 感染が確認されていない人(比較対象) | 0.21% |
感染者では約300人に1人、比較対象では約500人に1人が診断された計算です。
両者の差は1,000人あたり約1.4人でした。
年齢や基礎疾患などを考慮した統計解析では、新型コロナ感染者の肺線維症診断に関するハザード比は2.33でした。これは、感染歴とその後の肺線維症診断との間に関連があることを示しています。
ただし、この結果には注意が必要です。
この研究では診療記録に登録された診断名を用いており、すべての患者さんでCT画像や専門医による確認が行われたわけではありません。
また、感染後は医療機関を受診したり、胸部画像検査を受けたりする機会が増えるため、以前からあった肺の変化が発見されやすくなる可能性もあります。
さらに、この研究では、感染後に残った線維化した変化と、進行性の肺線維症を十分に区別できていません。
感染後に肺線維症と診断される割合は高くなっていましたが、実際に診断された人は少数でした。感染した人の多くが肺線維症になるという意味ではありません。
インフルエンザでも肺に変化が残ることがあります
肺の変化は、新型コロナに限ったものではありません。
インフルエンザでも、重症肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を起こした患者さんでは、回復後も肺の画像に異常が残ることがあります。
2024年に発表されたH1N1インフルエンザ重症肺炎・ARDSの追跡研究では、肺のCT所見の改善に長い時間を要することが報告されました。
一部の画像所見は12か月の時点で改善が認められましたが、呼吸機能や運動能力には十分な回復がみられない患者さんもいました。
これは集中治療室で治療を受けた重症患者さんの研究です。通常のインフルエンザ感染者に同じような変化が起こるという意味ではありません。
私たちの肺には、感染によって傷ついた組織を修復する仕組みがあります。
感染後の肺の変化には、時間とともに改善するものと、長く残るものがあります。
こんな症状が続く場合はご相談ください
感染後、次のような症状が続く場合には、一度診察を受けることをお勧めします。
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咳が3週間以上続いている
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以前より階段や坂道で息切れする
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軽い運動でも呼吸が苦しくなる
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いったん改善した咳や息切れが再び悪化する
咳が8週間以上続く場合は「慢性咳嗽」と呼ばれ、原因を詳しく調べることが重要になります。
ただし、3週間未満であっても、症状が強い場合や悪化している場合には早めに受診してください。
特に、高齢の方、喫煙歴のある方、重い肺炎で入院した方、もともと肺の病気がある方は、症状の変化に注意しましょう。
長引く咳や息切れの原因は、肺線維症だけではありません。喘息、感染後の気道過敏、心臓の病気、体力低下なども考えられます。
症状や診察所見に応じて、酸素飽和度の測定、胸部X線検査、呼吸機能検査などを検討します。
突然の強い息切れ、胸痛、唇が紫色になる、息苦しくて会話が続けられないといった場合には、救急受診が必要です。
肺の健康を守るためにできること
感染後の肺の健康を守るためには、基本的な健康管理が大切です。
インフルエンザや新型コロナのワクチン接種は、対象となる方の重症化予防に役立ちます。
また、禁煙は肺の健康を守るうえで重要です。
重症肺炎などからの回復期には、体調や呼吸状態に応じたリハビリテーションが役立つ場合があります。
ただし、強い疲労や運動後の症状悪化がある場合には、無理に運動量を増やさず、医療者と相談してください。
おわりに――大切なのは回復の経過を見守ること
新型コロナやインフルエンザの研究から、感染症が治った後も、一部の患者さんでは肺に影響が残ることがわかってきました。
しかし、多くの人は回復していきます。
症状がなく、普段どおり生活できている方に、感染したという理由だけで定期的な胸部CT検査を行うことは、一般的には勧められていません。
一方、咳や息切れが長引く場合には、その原因を確かめることが大切です。
感染症が治ったかどうかだけでなく、その後、体がどのように回復しているかにも目を向けましょう。
参考文献
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Changela S, et al. Incidence of new-onset pulmonary fibrosis 4.5 years post SARS-CoV-2 infection in an academic urban medical center. Respiratory Research. 2026;27:429.
https://doi.org/10.1186/s12931-026-03855-4 -
Tang X, Xu XL, et al. Long-term outcomes of survivors with influenza A H1N1 virus-induced severe pneumonia and ARDS: a single-center prospective cohort study. Frontiers in Cellular and Infection Microbiology. 2024;14:1378379.
https://doi.org/10.3389/fcimb.2024.1378379
本記事は医学研究を紹介する一般的な健康情報です。個々の症状については、診察に基づく判断が必要です。
監修:菊池クリニック院長
公開日:2026年11月7日
