2025-01-31 21:43:00

人は皆認知症

「人は皆認知症」

先日、かかりつけ医認知症対応力向上研修を受けました。

認知症は特別な病気ではなく、誰もが歳を重ねる中で直面する可能性のある状態です。

だからこそ、「認知症を特別視せず、共に生きる社会をどう作るか」が今問われています。

今回は、その研修の概要を紹介します。

 

認知症は誰にでも起こりうる

「認知症」と聞くと、どこか遠い存在のように感じるかもしれません。

しかし、認知機能は誰しも加齢とともに変化し、認知症の要素を持たない人はいません。

 

例えば、若い頃より物忘れが増えたと感じることは誰にでもあります。

では、それが認知症なのでしょうか?

 

研修では、「認知症」と「加齢によるもの忘れ」の違いを明確にすることが重要だと学びました。

 

【加齢によるもの忘れ】

昨日食べたものを思い出せないが、言われれば思い出せる

・忘れっぽくなるが、日常生活には支障がない

・時間や場所の感覚は正常

 

【認知症による記憶障害】

昨日食べたもの自体を覚えていない

・忘れることで日常生活に支障が出る

・時間や場所の感覚が混乱する

 

つまり、認知症は単なる「もの忘れ」ではなく、「記憶そのものが抜け落ちる」状態が特徴なのです。

 

5人に1人が認知症の時代へ

研修では、2025年には65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されていることが示されました。

認知症の診断を受けると、多くの人が「これからどうなるのか?」という不安を抱きます。

・何ができなくなるのか?

・家族に迷惑をかけるのでは?

・仕事は続けられるのか?

しかし、認知症だからといって、すぐに何もできなくなるわけではありません。

むしろ、診断後の対応次第で、認知症と共にその人らしく生きることは十分に可能なのです。

 

早期発見・早期対応の重要性

研修では、認知症の早期発見・早期対応の意義についても学びました。

・早期診断によって進行を遅らせる治療が可能になる

・本人や家族が将来に備えた準備をする時間を確保できる

・適切な介護・支援を早い段階から受けることができる

 

特に印象的だったのは、「本人が変化に戸惑う期間を短くすることができる」という点です。

診断が遅れると、本人は「なぜ思い出せないのか」「なぜ家族が心配するのか」と混乱し、不安や怒りが募ります。

これが、いわゆるBPSD(行動・心理症状)を悪化させる要因にもなります。

だからこそ、早めに受診し、適切な情報提供を行うことが重要なのです。

 

認知症とともに生きる社会へ

研修では、「認知症とともに生きる」という視点が強調されていました。

かつては「認知症の人=支えられるだけの存在」と見なされがちでしたが、今では「認知症の人も社会の一員として役割を持つ」ことが大切だと考えられています。

例えば、地域には以下のような取り組みがあります。

・認知症カフェ:本人や家族が気軽に集まり、情報交換できる場

・認知症サポーター:商店や銀行の職員が研修を受け、認知症の人を支援できる仕組み

・本人ミーティング:認知症の人自身が意見を述べ、地域の取り組みに参画する

 

研修では、「認知症の人が主役になれる場を作ることが大切」という言葉が印象に残りました。

 

家族や地域の役割

認知症と診断された本人だけでなく、家族もまた大きな影響を受けます。

研修では、家族がどのように対応すればよいかについても学びました。

 

【家族ができること】

・本人の気持ちを尊重する(できることはできるだけ本人に任せる)

・適切な距離感を保つ(過度な介入は本人の自尊心を傷つける)

・介護サービスを積極的に活用する(家族だけで抱え込まない)

 

また、地域全体で認知症の人を支える仕組みも必要です。

 

【地域ができること】

・認知症に優しい環境を作る(わかりやすい標識、音声案内など)

・認知症の理解を広める(講演会やイベントを開催)

・見守り活動を強化する(地域の人が声をかけやすい環境作り)

 

認知症は、決して「本人と家族だけの問題」ではありません。

社会全体で支えることで、よりよい共生が可能になります。

 

まとめ:人は皆、認知症の要素を持つ

研修を通じて、改めて「認知症は誰にでも起こりうること」だと実感しました。

そして、「認知症の人とともに生きる社会をどう作るか」が、これからの課題となります。

 

認知症と診断されたからといって、すべてを諦める必要はありません。

むしろ、認知症と共に生きるためにできることを考え、行動することが大切です。

 

そして何より、「認知症は遠い存在ではなく、私たち一人ひとりが向き合うべき課題である」ということを、多くの人に知ってほしいと思います。

 

人は皆、認知症の要素を持っている。だからこそ、共に生きる社会を作りましょう。