🌀 第4回 なぜ、うつ病から抜け出せなくなるのか?
🌀 第4回
なぜ、うつ病から抜け出せなくなるのか?
― 感情・思考・行動が絡み合う「悪循環」のしくみ ―
はじめに
「何とかしなきゃと思っているのに、体が動かない」
「考えても、悪い方向にばかり行ってしまう」
「自分でももどかしいのに、抜け出せない」
うつ病の方から、よく聞く声です。
これは“意志が弱い”のではなく、心と脳が作り出す悪循環に巻き込まれている状態。
今回は、この「うつの悪循環」について、脳と心の働きから丁寧に解説します。
うつ病には「こころの悪循環」がある
うつ病では、多くのケースで次の3つが連動しています:
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感情の落ち込み(悲しみ・不安・焦り)
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ネガティブな思考(自己否定・将来への悲観)
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行動の低下・回避(外出・人付き合い・仕事の停滞)
この3つがぐるぐると連鎖し、悪循環のループができあがります。
🔄 悪循環モデル図(視覚化)
以下はその関係性を示したモデル図です:
🧠 うつの悪循環モデル
感情の落ち込み
↓
ネガティブな思考
↓
行動の低下・回避
↓
さらに気分が悪化
↺(繰り返し)
自動的に浮かぶ“ネガティブ思考”のワナ
うつ状態では、思考に特徴があります。
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「どうせ失敗する」
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「私は迷惑をかけてばかり」
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「やっても意味がない」
こうした考えは、自分で意図して考えているわけではなく、
脳が自動的に出してしまう“自動思考”です。
しかし、本人にとってはそれが現実のように感じられてしまうのです。
行動が止まると、さらに落ち込む
気分が落ち込むと、動くのが億劫になります。
そして、
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予定をキャンセルする
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外に出なくなる
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一人で過ごす時間が増える
こうした行動の低下によって、さらに気分が落ち込む原因が増えてしまいます。
🧑⚕️【心療内科医的視点】
活動量の低下は、自律神経やホルモンの乱れにもつながり、
「こころ」と「からだ」の両方が止まってしまう状態に陥りやすくなります。
回復のカギは「行動」から
この悪循環を断ち切るために大切なのは――
「思考を変える」よりも、
「行動を少しずつ変える」こと。
思考は脳の疲労によって偏っているため、
無理に考え方を変えようとするほど、空回りしてしまうことがあります。
まずは、小さな一歩から
効果的なのは、「考えなくてもできる小さな行動」です:
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カーテンを開ける
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好きな飲み物を用意する
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数分だけ散歩する
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誰かに一言だけ挨拶する
それだけでも、脳と心の流れがわずかに変化します。
それがやがて、感情や思考の循環にも風穴をあけてくれるのです。
📝 まとめ
うつ病では、感情・思考・行動が悪循環に陥る。
抜け出すためには、まずは小さな行動から始めるのが効果的です。
🛡️ 免責事項とご相談のすすめ
本記事は、うつ病への理解を深めるための情報提供を目的としたものであり、
診断や治療の代わりになるものではありません。
以下のような状態が続いている場合は、医師への相談をおすすめします:
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気分の落ち込みが2週間以上続いている
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眠れない、食べられない、緊張が抜けない
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日常生活や仕事に支障が出ている
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自分の考えが極端にネガティブになっていると感じる
早めの受診が、回復の第一歩です。
