SGLT2阻害薬が心臓と腎臓を守る？その注目の理由を解説！

 

ここ数年、糖尿病の治療薬として知られている「SGLT2阻害薬」が、心臓や腎臓の健康を守る薬としても注目を集めています。糖尿病がない人にも使われることが増えているこの薬は、なぜ心臓や腎臓を守る効果があるのでしょうか？その理由を分かりやすく解説します。

 

1. SGLT2阻害薬ってどんな薬？

 

SGLT2阻害薬は、腎臓で働く「ナトリウム-グルコース共輸送体2（SGLT2）」というたんぱく質をブロックする薬です。このたんぱく質は、尿中に出たグルコース（血糖）を体に再吸収する役割があります。この薬はSGLT2を阻害することで、糖を尿中に排泄し、血糖値を下げます。

 

しかし、最近の研究でこの薬が「血糖値を下げるだけではない」ことがわかってきました。実は、心臓や腎臓を守る働きがあり、糖尿病がない人でも恩恵を受けることができるのです。

 

2. 心臓を守る仕組み

 

心不全に効果あり！

 

SGLT2阻害薬は、心不全の治療薬としても注目されています。心不全とは、心臓が血液を十分に送り出せなくなる病気で、息切れやむくみ、疲労感などの症状を引き起こします。この薬は以下のような仕組みで心臓を助けます。

1. 余分な水分を体から出す

尿中にナトリウムと水分を排泄することで、体の中の余分な水分を減らし、心臓の負担を軽くします。

2. 血圧を下げる

血管の負担が減ることで、心臓が血液を送り出しやすくなります。

3. 心臓のエネルギー効率を改善

この薬を使うと、体内で「ケトン体」というエネルギー源が増加します。ケトン体は心臓が効率よく使える燃料のため、心臓の働きを助けます。

 

糖尿病がない人にも効果がある

 

研究では、糖尿病がなくても心不全の患者さんがこの薬を使うことで、心不全による入院や死亡リスクが大幅に減ることが示されています。

 

3. 腎臓を守る仕組み

 

腎臓の負担を軽くする

 

SGLT2阻害薬は、腎臓の中で特に大事な「糸球体」と呼ばれる部分を守る働きがあります。糸球体は血液をろ過するフィルターのような役割をしていますが、糖尿病や高血圧などで負担がかかりすぎると傷んでしまいます。この薬は次のように腎臓を守ります：

1. 糸球体の負担を軽減

糸球体の中を流れる圧力を下げることで、腎臓が傷つくのを防ぎます。

2. 腎臓の炎症を抑える

SGLT2阻害薬は、腎臓に炎症を引き起こす物質の働きを抑えることで、腎臓の健康を保ちます。

3. アルブミン尿を減らす

アルブミン尿は、腎臓がダメージを受けているサインですが、この薬はアルブミン尿を減らし、腎臓の状態を改善します。

 

腎臓病の進行を遅らせる

 

慢性腎臓病（CKD）の患者さんがこの薬を使うことで、腎不全や透析のリスクを大幅に減らすことができるという研究結果もあります。糖尿病の有無に関わらず、腎臓の健康を守る薬として期待されています。

 

4. 心臓と腎臓はつながっている

 

心臓と腎臓は密接につながっています。腎臓が悪くなると心臓にも負担がかかり、逆に心臓が弱ると腎臓も影響を受けます。これを「心腎連関（しんじんれんかん）」と呼びます。

 

SGLT2阻害薬は、心臓と腎臓の両方を守ることができる、数少ない薬の一つです。この薬を使うことで、「心臓と腎臓の悪循環」を断ち切ることが期待されています。

 

5. 副作用に注意しながら使おう

 

SGLT2阻害薬は多くのメリットがありますが、副作用もあります。特に注意すべき点は以下の通りです：

• 尿路感染症や性器感染症

尿中に糖が出ることで、細菌が繁殖しやすくなるため注意が必要です。

• 脱水や低血圧

尿の量が増えるため、水分補給が大切です。

• ケトアシドーシス

まれに血中の酸性度が高くなることがあります。特に糖質制限を行っている方や低炭水化物ダイエット中の方は、医師と相談しながら使用してください。

 

6. まとめ：心臓と腎臓を守る新しい選択肢

 

SGLT2阻害薬は、もともと糖尿病治療薬として使われていましたが、心不全や慢性腎臓病の治療にも役立つことが分かり、今では糖尿病がない人にも使われるようになっています。この薬は、心臓と腎臓の両方を守る「未来の薬」として大きな注目を集めています。

 

もし心不全や腎臓病のリスクが気になる方がいれば、ぜひ医師に相談してみてください。適切な治療を受けることで、心臓や腎臓の健康を守り、生活の質を向上させることができるかもしれません。