Lewy(レビー)小体型認知症(DLB)とは?
Lewy小体型認知症(DLB)とは?〜早期発見と予防のためにできること〜
こんにちは。認知症予防専門医の立場から、今回は「Lewy小体型認知症(DLB)」についてお話しします。
「DLBって聞いたことない」という方も多いかもしれませんが、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症のひとつで、特に高齢男性に多く見られます。
この病気の特徴や、早期に気づくためのポイント、そして予防の視点から私たちにできることをお伝えします。
■ DLBとはどんな認知症?
DLBは、「レビー小体(Lewy bodies)」と呼ばれる異常なたんぱく質(α-シヌクレイン)が脳にたまることによって起こる認知症です。
物忘れだけでなく、「幻視」や「体のこわばり」、「立ちくらみ」や「夢の中で暴れる」などの多彩な症状が現れるのが特徴です。
■ DLBの早期発見ポイント
認知症は「忘れること」から始まると思われがちですが、DLBでは記憶よりも他の症状が先に出ることがあります。早期発見のために、以下の症状に注目しましょう。
✅ DLBに特徴的な初期症状
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リアルな幻視(人や動物が見える)
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注意力の波がある(日によって頭の冴え方が違う)
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レム睡眠行動障害(RBD)(寝ている間に大声を出す、手足を動かす)
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手足のこわばりや歩きにくさ
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立ちくらみ、便秘、頻尿などの自律神経症状
これらが複数みられる場合、「加齢のせい」で済ませず、早めに医療機関で相談することが大切です。
■ DLBの診断と検査
DLBは、医師の診察と問診に加えて、脳画像検査(MRIやSPECT)やDATスキャン(ドパミントランスポーターSPECT)で診断をサポートします。
DLBでは脳のドパミン神経の働きが低下しているため、DATスキャンで異常がはっきりと見えることがあります。
→ 早期発見により、薬の選択やケアの計画を早く整えることができるのです。
■ DLBは「チーム」で支える時代へ
DLBは、記憶障害だけでなく、運動・精神・睡眠・自律神経など多方面にわたる症状があるため、治療やケアもひとりの医師だけでは難しいのが現実です。
そのため、神経内科、精神科、看護師、薬剤師、リハビリ職、栄養士、ケアマネージャーなど、多職種が連携する**「チーム医療」**がとても重要です。
そして、最も大切なのは、家族と地域の理解と協力です。幻視や妄想があっても「その人らしさ」を支えることが、生活の質を大きく左右します。
■ DLBの治療と予防的ケア
DLBに対しては、症状ごとの薬物治療が行われます。ただし、薬への過敏性が高いため、医師が注意深く調整する必要があります。
主な治療の例:
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認知症症状:ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害薬
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幻視・妄想:できるだけ非薬物的対応を優先
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パーキンソン症状:レボドパを慎重に使用
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睡眠障害:メラトニンや生活リズムの改善
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自律神経症状:生活習慣+必要に応じて薬物治療
■ 認知症予防の観点から私たちができること
DLBの予防には、「脳にやさしい生活習慣」が大きく関わります。DLBも他の認知症同様、生活習慣病や睡眠障害、社会的孤立が進行のリスクとなることがわかっています。
DLB予防のための実践ポイント
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🧠 定期的な有酸素運動(ウォーキング、ヨガなど)
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🥦 抗炎症性の地中海型食生活
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🛌 睡眠の質の改善(特にレム睡眠)
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🗣 人との交流・地域活動
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📚 認知刺激(読書、学び直し、ゲーム)
また、50代以降でRBD(夢で暴れる)症状がある方は、DLBの前駆期の可能性もあるため、神経内科への早めの相談をお勧めします。
■ 最後に:本人も家族も「早めに知ること」が最大の予防
DLBは複雑で、時に混乱や不安を伴う認知症ですが、**「早く気づくこと」「正しく知ること」「支え合うこと」**で、本人も家族も穏やかに暮らすことが可能です。
認知症は「なる前」よりも、「なってからどう支えるか」がとても大切な時代になっています。
DLBという疾患を正しく理解し、予防とケアを社会全体で支えるために、少しでもこの情報がお役に立てば幸いです。