身体のエネルギー危機とロングコビット
「身体のエネルギー危機とロングCOVID」
はじめに
「ロングCOVID」とは、新型コロナウイルスに感染した後、数か月たっても体調が回復せず、だるさや息苦しさ、集中力の低下(ブレインフォグ)、眠れない、気持ちが落ち込むといった症状が続く状態のことです。
最近、このロングCOVIDでは、「体のエネルギーを作る力が落ちている」ことが関係しているとわかってきました。特に、細胞の中にある「ミトコンドリア」というエネルギー工場がうまく働かなくなることや、鉄(Fe)というミネラルのバランスが崩れることが大きなポイントだと考えられています。
1. ミトコンドリアって何?
ミトコンドリアは、細胞の中にある「発電所」みたいなものです。
食べ物から取り出した栄養(糖質・脂質・タンパク質)をもとに、体を動かすためのエネルギー(ATP)を作ります。
でも、コロナウイルスに感染すると、体に強い炎症(=体の中で火事が起きるようなもの)が起こり、この炎症がミトコンドリアを傷つけてしまうのです。
ミトコンドリアが傷つくと、うまくエネルギーが作れなくなり、体がエネルギー不足になってしまいます。
この状態が続くと、「何をしてもすぐ疲れる」「ちょっと動くだけでぐったりする」といった症状につながります。
実際にロングCOVIDの人の筋肉を調べると、「ミトコンドリアが減っている」「ミトコンドリアの働きが悪い」といった変化が確認されています。
特に、運動した後にこの問題が悪化することがわかっていて、「運動すると逆に体調が悪くなる」という人が多いのもこのためです。
2. 鉄(Fe)とロングCOVIDの関係
鉄は、酸素を運ぶ血液の成分(ヘモグロビン)を作るために必要なミネラルですが、それだけではなく、ミトコンドリアの中でも大事な働きをしています。
ところが、コロナ感染のとき、体はウイルスと戦うために鉄の使い方を変えてしまいます。
炎症によって「ヘプシジン」という物質が増え、このヘプシジンが「体の中に鉄があっても、うまく使えない状態」を引き起こします。
これを機能性鉄欠乏といいます。
さらに、感染の影響で腸が弱り、食事から鉄を吸収する力も落ちるので、「鉄そのものが足りなくなる(鉄欠乏)」ことも起きやすくなります。
逆に、ウイルスによる細胞破壊が進むと、細胞の中にある鉄が血液に漏れ出し、「鉄が多すぎる」ことで酸化ストレス(サビのようなダメージ)を増やす可能性も指摘されています。
つまり、「鉄が足りない」と「鉄が多すぎる」という2つの問題が、ロングCOVIDの体調不良に関係しているのです。
3. エネルギー不足が続く悪循環
こうした「ミトコンドリアの機能低下」と「鉄のバランス崩れ」が同時に起きると、どんどんエネルギー不足が進んでしまいます。
エネルギーが作れない→体が炎症を起こしやすくなる→さらにミトコンドリアが壊れる→鉄のバランスも悪くなる…という「負のループ」に陥ります。
その結果、ロングCOVIDの特徴的な症状である「強い疲労感」や「運動すると悪化する体調不良」がなかなか改善しなくなるのです。
まとめ
ロングCOVIDで「疲れやすい」「ずっと体がだるい」「集中できない」といった症状が続く理由には、次のようなことが関係しています。
- ミトコンドリア(細胞の発電所)が壊れて、エネルギーが作れない
- 鉄のバランスが崩れて、ミトコンドリアの働きがさらに悪くなる
- この状態が長く続くことで、さらに体が弱っていく
これらの仕組みを知ることで、栄養バランスを整えたり、適度な運動や休息を上手に組み合わせたりして、回復に向けたヒントが見えてきます。