「連続38万回の奇跡」
「連続38万回の奇跡」
作年末に熱を出した。熱が出ると人間は原始人に戻る。布団にうずくまり、外敵(つまり、寒さと病原菌)から身を守り、ただひたすら回復を待つ。これほど科学を信じる者も、38度の熱には勝てないのだ。
インフルエンザかもしれないと思い、インコロ(インフルエンザとコロナの同時検査キット)を試した。陰性だった。翌日、もう一度試した。陰性だった。妙なもので、2日連続で陰性が続くと「本当に?」と疑いたくなる。世の中、確率とは不思議なもので、当たるときは当たるし、外れるときは外れる。
1月31日、年末ジャンボの当選結果を確認した。ハズレ。
「3回続けて外れるとは、何と不運だ」と、大学時代の同級生に年賀状に書いた。すると、すぐに返事がきた。「次に当たったら、確率4分の1で高すぎる」とある。確率に詳しくないが、なるほどと思った。
年末ジャンボに当たる確率は 1/10,000,000(1000万分の1) である。これを3回続けて外したところで、何の驚きもないはずだ。しかし、体調不良と陰性続きと年末ジャンボのハズレが重なると、人は妙に「運」に敏感になる。「ツイていない」と嘆きたくなる。
だが、私は生きている。連続38万回、宝くじ1等を当て続けたほどの奇跡をくぐり抜けて。
生まれる確率を計算すると、宝くじに38万回連続で当たるのと同じくらい低いという。そう考えれば、「3回のハズレ」に文句を言うのは滑稽である。生きているだけで、もう十分に運を使い果たしているのだ。
人間は身の丈を知らねばならぬ。連続38万回の奇跡をすでに享受しているのに、さらに1回の奇跡を望むのは、虫が良すぎる。
今年もまた、年末ジャンボを買おう。そしてまた外れるだろう。そのときは、「今年も無事に生き延びました」とでも書いて、同級生に送ってやろうと思う。