2024-12-18 22:34:00

パニック症とは?そのリスクと向き合い方

パニック症とは?そのリスクと向き合い方

 

最近、久しぶりにパニック症の新患を何人か診療する機会がありました。

パニック発作は特別なものではなく、多くの人が人生で一度は経験する可能性があると言われています。統計によると、人口の約22%が生涯に一度以上のパニック発作を経験するそうです。

 

ただし、ほとんどの人は一度きりの発作で回復し、日常生活を続けています。パニック発作がパニック症(パニック障害)に進行する人の割合は比較的少なく、全体の1割程度にとどまると報告されています。このことから、多くの場合、パニック発作は一過性のものであることがわかります。

 

パニック症になるリスク要因

 

では、なぜ一部の人はパニック発作からパニック症に進行するのでしょうか?

その背景には、さまざまな要因が関係しています。主に以下の3つのリスク要因が挙げられます。

 

1. 気質的要因

ネガティブな感情を抱きやすい性格

不安や緊張、怒りなどの感情を頻繁に抱える人は、ストレスに対して脆弱になりやすいです。

不安への過敏性

ちょっとした身体の不快感や不安を「完全に解消しないと落ち着かない」と感じる傾向のある人は、発作を強化してしまうリスクがあります。

不安を過度に恐れる傾向

「この不安が再び大きな発作を引き起こすのではないか」と考えることで、恐怖が増幅され、悪循環に陥りやすくなります。

 

2. 環境要因

子どもの頃に虐待やトラウマを経験している。

長期的なストレスフルな生活環境(仕事や家庭内の問題など)。

サポート体制が不足している、あるいは社会的孤立を感じている。

 

3. 遺伝・生理学的要因

家族歴の影響

家族に不安障害や抑うつ症がある場合、リスクが高まることがわかっています。

生理学的特性

呼吸や交感神経系が過敏であることが発作の引き金になることがあります。

 

不安への過敏性とその克服の重要性

 

パニック症の患者さんの中には、不安や身体の不快感が少しでも残っていると「完全に解消しないと気が済まない」と感じる方がいます。このような過敏性がある場合、不安や身体症状に意識が集中し、それが新たな発作を誘発するという悪循環が生じます。

 

治療の一環として、抗不安薬を処方することはありますが、これには注意が必要です。抗不安薬は一時的な症状の緩和には有効ですが、長期間使用する場合には副作用や依存のリスクが伴います。そのため、抗不安薬を使用する際には、医師の指導のもとで適切な量と期間を守ることが大切です。

 

一方で、薬物療法だけに頼るのではなく、心理療法や生活習慣の改善を併用することが推奨されます。不安に対処するスキルを身につけることで、薬に頼らずに自分の力で症状をコントロールすることが目指されます。

 

目的本意の生活を築くために

 

パニック症を克服するには、「不安を完全に取り除くこと」を目標にするのではなく、不安を抱えながらも自分の価値観や目標に基づいて行動することが鍵となります。不安を受け入れつつ、目的本意の生活を送ることが、結果的に不安の影響を最小限に抑える道となります。

 

具体的な方法

1. 認知行動療法(CBT)

不安の原因となる思考パターンを見直し、より現実的で柔軟な考え方を育てます。

2. リラクゼーション法

呼吸法やマインドフルネス瞑想、自律訓練法などを活用して、不安を感じたときに心を落ち着けるスキルを身につけます。

3. 生活習慣の見直し

規則正しい睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を取り入れることで、心身の安定を図ります。

4. 支援を受ける

家族や友人とのつながりを大切にし、孤立を防ぎます。また、専門家の治療を受けることも大きな助けになります。

 

まとめ

 

パニック発作は誰にでも起こりうるもので、その多くは一時的なものです。しかし、特定の要因が絡み合うことで、パニック症に進行することもあります。不安に対して過剰に敏感になりすぎないようにしながら、目的本意の生活を築くことで、不安の影響をコントロールすることが可能です。

 

大切なのは、不安そのものを完全に排除しようとするのではなく、不安があっても「自分らしい生き方」を見つけていくことです。一歩ずつ前進するそのプロセスが、あなたの人生をより豊かにするものになるでしょう。