難聴と認知症: 超高齢社会における課題と対策
難聴と認知症: 超高齢社会における課題と対策
日本は超高齢社会に突入し、高齢者の健康問題はますます深刻化しています。特に、難聴と認知症は大きな社会問題として認識されています。認知症は脳の変性により記憶や思考能力が低下する疾患ですが、最近の研究では、認知症の40%が予防可能であることが示されています 。その中でも、難聴は8%とかなりの割合を占めています 。
難聴の影響
難聴は単なる聴覚障害にとどまらず、コミュニケーションの障害や社会的孤立感を引き起こします。これが進行すると、妄想や幻聴といった精神的な問題も引き起こすことがあります。高齢者にとっては特に深刻で、日常生活における活動の低下や認知症のリスクを高める要因となります。
ケーススタディ: 難聴と認知症の関連
ある患者さんが運転免許証の更新時に認知症の疑いがあるとされ、当院に来院しました。この患者さんは難聴があり、会話が難しかったため、奥様が通訳として同伴しました。認知機能の評価としてMMSE、長谷川式、MoCa-Jなどの試験を実施しました。また、古河赤十字病院でMRIを施行し、脳神経外科の先生の診断で、異常なしとのことでした。詳しく見ると、海馬の萎縮はほとんどないが、白質病変が多く微小脳血管障害が疑われました。
補聴器を使用するようになってから、最も難しいMoCa-Jの試験で21点(正常範囲は26点以上)という結果を得ました。計算能力と視空間認知に難があるため、軽度認知障害と診断されました。このケースは、難聴が認知症評価において重要な要因であることを示しています。
難聴の予防と管理
難聴の危険因子には遺伝、後天的要因、環境因子があり、高血圧、糖尿病、脳血管障害、喫煙、騒音暴露などが含まれます。これらは生活習慣病と同様に血管系の障害として難聴悪化の主因となります。また、スマホや携帯型音楽プレーヤーもコントロール可能な危険因子です。
「聴こえ8030運動」といった活動は、80歳でも30dBの音が聴こえる聴力を維持することを目指しています。高齢者には定期的な聴力測定を行い、難聴予防の啓発が重要です。
結論
高齢社会において、難聴と認知症の関連性を理解し、早期に対策を講じることが重要です。補聴器の利用促進や生活習慣の改善を通じて、認知症の発症リスクを減少させることが期待されます。社会全体での意識向上と予防策の徹底が求められます。