アミロイドβの生体防御反応としての役割とアルツハイマー病の関係
アミロイドβの生体防御反応としての役割とアルツハイマー病の関係
アミロイドβの役割
アミロイドβ(Aβ)は、アルツハイマー病(AD)の主要な病理学的マーカーであり、老人斑として神経外に沈着します。近年の研究では、Aβが単なる「病的産物」ではなく、生体防御反応の一環として機能する可能性があることが示唆されています。
生体防御反応としてのアミロイド
• 抗菌・抗ウイルス作用: Aβは抗菌作用を持ち、細菌やウイルスに対して防御機能を果たすことが示されています。これにより、Aβが感染症に対する生体防御反応として生成されるという仮説が立てられています 。
• 炎症応答の調節: Aβの蓄積は局所的な炎症反応を引き起こし、異常蛋白を除去しようとする免疫応答を促進します。しかし、Aβの過剰生成や蓄積が持続すると、慢性炎症が引き起こされ、神経細胞の損傷が進行します 。
アルツハイマー病の治療と予防
• レカネマブの効果: レカネマブはAβに対するモノクロナール抗体で、Aβの凝縮抑制やミクログリアを介したアミロイドプラークの除去を行い、アルツハイマー病の進行を抑制します 。
• ワクチン接種と認知症リスクの低下: 帯状疱疹ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が、認知症のリスクを低下させるという報告があります。これにより、感染症予防が認知症予防に寄与する可能性が示唆されています 。
新型コロナウイルスと認知症
• COVID-19と神経炎症: 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、脳内に侵入し神経炎症を引き起こすことがあり、これが認知機能に悪影響を与える可能性があります。COVID-19感染が認知症リスクを増加させるかどうかについては、現在も研究が進行中です 。
結論
アミロイドβは感染に対する生体防御反応として機能する可能性があり、アルツハイマー病の病態形成に複雑に関与しています。このことから、アルツハイマー病の治療は単一の薬剤では難しく、包括的なアプローチが必要です。現在のところ、感染予防対策(ワクチン接種など)も認知症リスクの低下に有効であると考えられています。