2024-07-11 22:15:00

ケトン体と心身医学

ケトン体と心身医学について

 

はじめに

私がケトン体の有益性を最初に知ったのは、今から約40年前、リチャード・カニンの著書「メガ・ニュートリション」を読んだ時でした。この本には、炭水化物の至適な摂取量は人によって異なることや、炭水化物摂取量を極力減らしてケトーシスの状態になることで心身の状態が改善する人がいることが記されていました。また、ケトジェニックダイエットが薬物治療でコントロールできないてんかんの治療に用いられることも強調されていました。

 

ケトジェニックダイエットの基本

ケトジェニックダイエット(ケトン食)は、高脂肪、低炭水化物、中タンパク質の食事法です。この食事法により、体は炭水化物から得られるグルコースをエネルギー源として使用する代わりに、脂肪を分解してケトン体を生成し、これを主要なエネルギー源とします。この状態をケトーシスと呼びます。

 

ケトーシスとその効果

ケトーシスは、体がエネルギー源としてケトン体を利用する代謝状態です。この状態により、以下のような効果が期待できます:

 

1. 体重減少:

   ・炭水化物摂取を制限することで、体脂肪がエネルギー源として利用されやすくなり、体重減少を促進します。

 

2. 精神的明瞭性の向上:

   ・ケトン体は脳の主要なエネルギー源となり、精神的な明瞭性や集中力の向上に寄与します。

 

3. エネルギーの安定供給:

   ・血糖値の急激な変動が少なくなり、安定したエネルギー供給が可能となります。

 

4. :不安感や緊張感の減少:

   ・ケトーシス状態では、不安感や緊張感が減少することが報告されています。これにより、ストレスの軽減と精神的な安定が促進されます。

 

5. 認知機能のサポート:

   ・ケトジェニックダイエットは、軽度認知障害の患者に対して認知機能の維持をサポートする効果があります。

 

絶食療法との関連

ケトーシスに関心を持ったきっかけの一つに、勤務していた病院で受け持った胃潰瘍の患者が九州大学で絶食療法を受けた経験があります。絶食療法は、体をケトーシス状態に導く一つの方法として知られています。この経験から、ケトーシスの状態が身体に与える影響について深く興味を持つようになりました。

 

クリニックでの応用

私のクリニックでは、ケトジェニックダイエットを取り入れることで、患者の健康改善を目指しています。以下はその具体例です:

 

1. 体重管理:

   ・肥満患者に対して、ケトジェニックダイエットを指導し、体重減少と関連する健康リスクの低減を図ります。

 

2. 軽度認知障害のサポート:

   ・軽度認知障害の患者には、ケトジェニックダイエットを勧めることがあります。これにより、認知機能の維持をサポートします。

 

3. 認知症患者へのアプローチ:

   ・認知症の患者には、MCTオイルを用いて通常の食事をしながらもケトン体のレベルを上げる方法を勧めることが多いです。これにより、ケトン体の効果を享受しつつ、食事の柔軟性を保つことができます。

 

 ケトジェニックダイエットの注意点

ケトジェニックダイエットはすべての人に向くものではありません。以下の点に注意が必要です:

 

1. ケトンフルーのリスク:

   ・ケトジェニックダイエットの初期には、ケトンフルーと呼ばれる一過性の副作用(頭痛、疲労、吐き気など)が現れることがあります。

 

2. 長期間の継続は避ける:

   ・代謝的柔軟性を損なわないために、ケトジェニックダイエットを長期間続けることは推奨されません。適切な期間で実施し、食事のバランスを保つことが重要です。

 

3. 主治医への相談:

   ・何か治療中の病気がある場合や新しい食事療法を始める前には、必ず主治医に相談することをお勧めします。

 

結論

ケトン体の有益性を理解し、適切に活用することで、患者の健康改善に大きく貢献することができます。40年前にリチャード・カニンの「メガ・ニュートリション」に出会ったことをきっかけに、ケトジェニックダイエットとケトーシスの効果について深く学び、実践してきました。これからも、最新の知見を取り入れながら、患者の健康と幸福に寄与していきたいと考えています。