脂質異常症の治療|菊池クリニック
菊池クリニック|生活習慣病・予防医療

脂質異常症の治療について

コレステロールの数字だけでなく、将来の心筋梗塞・脳梗塞を防ぐために。

当院では、LDLコレステロール(LDL-C)を治療の基本としつつ、血圧・血糖・喫煙・腎機能や、必要に応じてLp(a)、レムナントコレステロール、ApoBなどを組み合わせ、動脈硬化の危険性を総合的に評価します。

当院が大切にする6つの考え方

01. 数値よりも全体のリスク

LDL-Cが同じ値でも、年齢、糖尿病、腎臓病、喫煙歴、心血管疾患の既往によって治療目標は異なります。

02. 久山町スコアで層別化

対象となる40~79歳の一次予防では、日本人のデータに基づく「久山町スコア」を利用し、今後10年間の動脈硬化性疾患発症リスクを低・中・高に分類します。

03. LDL以外の脂質も評価

non-HDL-Cを日常診療で確認し、必要に応じてLp(a)、レムナント、ApoBなども参考にして、見落としやすい残余リスクを考えます。

04. 生活習慣の改善

食事中の飽和脂肪酸、食物繊維、運動、体重、飲酒や喫煙などを無理なく見直します。中性脂肪が高い場合は糖質過剰や内臓脂肪にも注目します。

05. 根拠に基づく薬の選択

スタチンを基本に、必要に応じてエゼチミブや専門医と連携したPCSK9阻害薬等を検討します。薬剤の必要性と副作用を丁寧に説明します。

06. 高血圧・糖尿病も一緒に管理

動脈硬化の予防は脂質だけでは完結しません。血圧、血糖、腎機能、禁煙などを含めて将来の健康を守ります。

久山町スコアによるリスク判定

日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、対象となる一次予防の方について、久山町研究から作成されたスコアを用いて10年間の冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞の発症リスクを評価します。脳出血やすべての脳梗塞を予測するものではありません。

  1. 最初に既往と合併症を確認
    冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞などの既往がある場合は二次予防として別の基準で評価します。糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、末梢動脈疾患(PAD)がある場合は、一次予防でも高リスクとして扱い、原則として久山町スコアで低リスクには分類しません。
  2. 該当する40~79歳の方でスコア判定
    年齢区分、性別、収縮期血圧、糖代謝異常(糖尿病を除く)、LDL-C、HDL-C、喫煙の情報を使って低・中・高リスクに分類します。
  3. リスクに応じて治療目標を検討
    10年発症リスクに加え、家族歴、著しいLDL-C高値、Lp(a)、動脈硬化所見、本人の希望なども考慮し、生活習慣と薬物治療を組み立てます。
10年発症リスク分類LDL-C管理目標(一次予防)
2%未満低リスク160 mg/dL未満
2%以上10%未満中リスク140 mg/dL未満
10%以上高リスク120 mg/dL未満

糖尿病、CKD、PADなどによる高リスク、および二次予防の方は病態別の管理目標を個別に設定します。40歳未満と80歳以上にはこの表の久山町スコアを機械的に当てはめません。

久山町スコア 簡易判定(参考)

2022年版ガイドラインの区分表に基づく教育用の簡易計算です。入力した値は外部送信しません。診断や処方の決定には使わず、診察時の説明の補助としてご利用ください。

項目を入力して判定してください。

スコアの限界:この簡易計算は「低・中・高」のリスク区分を返すもので、個人の正確な発症確率を算出するものではありません。家族性高コレステロール血症などは別途評価が必要です。

LDL-Cだけではわからないリスク

Lp(a):体質(遺伝)によるリスク

遺伝の影響が非常に強く、成人期の値は通常あまり変わりません。生涯に一度は測定を考える価値があります。高値は心筋梗塞や大動脈弁狭窄症などと関連します。

高値が判明した場合、Lp(a)を直接下げることだけに注目せず、LDL-Cや血圧など、改善できる危険因子をより厳格に管理します。

non-HDL-C:実用的な追加指標

総コレステロール − HDL-Cで計算でき、LDLやレムナントなどの動脈硬化に関係するコレステロールを幅広く反映します。まず通常の採血から評価します。

レムナントコレステロール

中性脂肪に富むリポ蛋白の代謝過程で生じる残存粒子に含まれるコレステロールです。高TG血症、糖尿病、内臓脂肪蓄積などとの関連に注目します。

計算によるレムナント-Cと検査法によるRLP-Cは同じ測定値ではなく、数値や基準を混同しません。

ApoB:粒子の数を反映

動脈硬化を起こし得る主要なリポ蛋白粒子には原則としてApoBが1分子ずつ含まれます。そのためApoBの血中量は粒子数の目安になります。LDL-Cと粒子数が一致しにくい場合の追加評価に役立ちます。

これらの追加検査が全員に必要というわけではありません。病歴、家族歴、検査結果から必要性を判断し、保険適用の条件や費用は診察時にご説明します。

生活習慣と薬物治療

治療法特徴・位置づけ
食事・運動・禁煙飽和脂肪酸の調整、野菜・豆類・魚・食物繊維、適度な運動、体重管理、飲酒の見直しを基本とします。
スタチンLDL-C低下と心血管イベント予防の根拠が豊富な基本薬。筋肉症状などの副作用も確認します。
エゼチミブ腸からのコレステロール吸収を抑えます。目標未達や薬剤不耐性に応じて併用等を検討します。
PCSK9阻害薬など高度なLDL-C低下が必要な特定の高リスク例などで、保険適応を確認し専門医とも連携します。
中性脂肪に対する治療糖尿病・飲酒・肥満・薬剤などの原因を確認。高度高TG血症では急性膵炎の予防も重要です。

患者さんの年齢、腎機能、合併症、妊娠の可能性、副作用や希望を踏まえて、無理なく続けられる治療を相談します。

当院が目指すこと

検査の数値を整えるだけでなく、数字の奥にあるリスクを理解し、10年後、20年後の心臓と脳の健康を守ること。

菊池クリニックでは、患者さんと一緒に動脈硬化予防に取り組みます。

参考:日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』『脂質異常症診療ガイド2023年版』/日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」。久山町スコア簡易判定は診療用原本の代わりとなるものではありません。
日本動脈硬化学会:脂質異常症診療のQ&A