慢性心不全の治療と管理|菊池クリニック
菊池クリニック|心不全の診療

慢性心不全の治療と管理

心不全の悪化を防ぎ、住み慣れた地域での暮らしを守るために。

症状や検査結果だけでなく、毎日の体重・血圧・生活の変化にも目を向け、一人ひとりの病状に応じた継続的な管理を大切にします。

慢性心不全とは

心不全は、心臓が十分に血液を送り出せない、あるいは血液を受け入れにくくなることで、息切れ、むくみ、疲れやすさなどが現れる状態です。症状が落ち着いていても、感染症、不整脈、塩分の摂りすぎ、薬の中断などがきっかけで悪化することがあります。

当院では、心不全の悪化や再入院のリスクを減らし、できるだけ自分らしい生活を続けられるよう支援します。

当院が大切にしている8つのこと

01

心不全の状態を継続的に確認

息切れ、むくみ、体重の変化を診察し、必要に応じてBNP・NT-proBNP、心電図、血液検査、心臓超音波検査(心エコー)などを活用します。検査の値だけでなく、以前の状態からの変化を重視します。

02

心臓の働きに応じた治療

収縮する力が低下したタイプと、収縮する力が保たれていても心臓が硬くなり、広がりにくいタイプなどを区別します。病型、血圧、腎機能、合併症に合わせて治療を調整します。

03

根拠に基づいた薬物治療

ARNI・ACE阻害薬・ARB、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬、利尿薬などを、心不全の種類に応じて選択します。症状の改善に加え、心不全の悪化や入院を減らすことも目的とします。

04

腎機能と電解質にも注意

心臓と腎臓は密接につながっています。薬の調整時には、腎機能や血液中のカリウム・ナトリウム、血圧、脱水の有無などを確認し、安全性を重視します。

05

食事と栄養、筋肉量を守る

塩分の摂りすぎを避けながら、低栄養や筋肉量の減少を防ぐことも大切にします。水分制限は全員に必要なわけではありません。食事と水分の摂り方は病状に応じて助言します。

06

体力と生活の質を維持

病状が安定していれば、無理のない歩行や筋力維持の運動が役立ちます。運動内容は症状に応じて判断し、専門的な心臓リハビリテーションが必要な場合は専門施設と連携します。

07

合併症を一緒に管理

高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、心房細動、睡眠時無呼吸症候群に加え、貧血や鉄欠乏にも注意します。心臓だけでなく全身の状態を診ます。

08

専門医療機関と連携

症状の悪化、重い不整脈、弁膜症などが疑われる場合は、循環器専門医療機関に紹介します。病状が安定している時期の日常的な管理を、地域のかかりつけ医として支えます。

心不全にはいくつかのタイプがあります

心エコーで調べる「左室駆出率(LVEF)」は、心臓が血液を送り出す働きを知る目安の一つです。

タイプ特徴治療の考え方
収縮力が低下した心不全
HFrEF
LVEF 40%以下予後改善が確認された基本的な薬物治療を組み合わせます。
収縮力が軽度低下した心不全
HFmrEF
LVEF 40%超~50%未満SGLT2阻害薬などを病状に応じて検討します。
収縮力が保たれた心不全
HFpEF
LVEF 50%以上心臓が広がりにくい場合などがあります。うっ血の改善や合併症の管理、病型に応じた薬物療法を行います。
収縮力が改善した心不全
HFimpEF
以前LVEF 40%以下で、10ポイント以上改善し、40%超となった状態改善しても再悪化の可能性があるため、原則として有効な治療を継続します。
これらは病状を理解するための分類です。LVEFの数値だけで心不全の有無や治療内容を決めるものではありません。

ご自宅で気をつけたい変化

毎日の記録は、心不全の悪化を早く発見する助けになります。可能な範囲で、同じ条件で確認しましょう。

  • 朝の体重を測る
  • 血圧と脈拍を確認する
  • 息切れが増えていないか
  • 足のむくみが強くないか
  • 横になると息苦しくないか
  • 薬を指示どおり服用できているか
体重増加などの連絡基準は、患者さんごとに個別に設定します。目安として、数日で約2kg増えた場合や、息切れ・むくみがいつもより強い場合は、早めに医療機関へご相談ください。体重が増えなくても悪化することがあります。
次の症状がある場合は、ためらわず119番通報を

安静にしていても強い呼吸困難がある、激しい胸の痛みがある、意識がはっきりしない、唇が紫色になるなどの症状は緊急対応が必要です。

心不全の自己管理に役立つ資料として、日本心不全学会の心不全手帳(第4版)もご参照ください。

心不全になる前からの予防も大切です

高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、肥満などは、将来の心不全に関係します。症状がない段階から、血圧、血糖、腎機能を適切に管理することが重要です。必要に応じて心電図、心エコー、BNP・NT-proBNPなどを用いて心不全の兆候を評価します。

症状が出る前の予防と、心不全と診断された後の悪化予防を、切れ目なく考えることを大切にしています。

受診から継続管理までの流れ

1.症状と生活状況の確認 ― 息切れ、むくみ、体重、血圧、服薬状況など
2.必要な検査 ― BNP・NT-proBNP、腎機能、電解質、心電図、心エコーなど
3.病型と治療方針の検討 ― 薬物療法、栄養、運動、合併症の管理
4.家庭での記録と定期的な見直し ― 悪化の兆候を早期に捉える
5.必要時は循環器専門医療機関と連携
心臓だけでなく、腎臓を診る。
検査値だけでなく、日々の変化を診る。
そして、病気だけでなく、その人の暮らしを守る。

参考情報

本ページは日本循環器学会・日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」などを参考に、患者さん向けに構成しています。

日本心不全学会:心不全診療ガイドライン
日本心不全学会:心不全手帳
日本心不全学会:栄養評価・管理に関するステートメント