腐ったみかんを取り除いて、老年症候群を予防・改善する
細胞レベルの老化現象
細胞レベルでの老化は、個体の老化に擬えて細胞老化と呼ばれます。これらの老化細胞は、老化関連分泌表現因子(SASP因子)と呼ばれる炎症性サイトカインを産生します。このSASP因子は、周囲の細胞に無菌性の慢性炎症を引き起こし、組織の機能低下や老年症候群の進行に寄与します。
メトフォルミンのアンチエイジング効果
糖尿病の治療薬として広く使用されているメトフォルミンには、SASP因子を制御する効果があることが知られています。現在、メトフォルミンがアンチエイジングにどの程度寄与するかについての研究が進められています。
セノリティクスとケルセチンの効果
老化細胞を選択的に除去する作用を持つ薬品がセノリティクスです。これらの薬品は、老化細胞を標的にして選択的に除去することで、周囲の細胞や組織に害を及ぼさず、老年症候群の予防・改善が期待されています。また、天然のフラボノイドであるケルセチンにも同様の作用があることが確認されています。人体に害の無いセノリティクスの医薬品開発研究が進行中です。
糖尿病治療薬とアンチエイジング
糖尿病患者は、通常の人よりも老化が進みやすいとされてきました。しかし、朗報があります。当院で最も使用頻度の高い糖尿病治療薬、SGLT2阻害剤は、腎臓の糸球体から一旦体外に捨てられたブドウ糖が、尿細管で再吸収されるのをブロックします。このことにより、ブドウ糖が体外に捨てられて血糖値も下がります。この薬には、ブドウ糖だけでなく、塩分や水分を排泄させる効果があるため、うっ血性心不全にも使われています。
SGLT2阻害剤の新たな効果
最近の研究で、SGLT2阻害剤には老化細胞の免疫チェックポイント分子の機能亢進を抑制し、老化細胞が免疫系によって除去されることを促す作用があることが分かってきました。さらに、この薬は腎臓の炎症を抑えたり、エネルギー消費を節約して腎臓を保護するため、慢性腎臓病にも適応があります。これは、自身の老化細胞除去機能を誘導するもので、糖尿病患者が若々しく元気でいられる理由の一つです。
当院では、最新の研究結果に基づいた治療を提供し、患者様の健康と若さをサポートしています。糖尿病治療を通じて、老化の進行を抑え、健康寿命を延ばすことが期待されます。どうぞお気軽にご相談ください。